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ペン・らいふ

小児糖尿病キャンプについて

No.2

東京女子医科大学 内科学講座
糖尿病・代謝内科学分野  小林 浩子

※ご所属・役職名は監修・取材当時のものです。

小児糖尿病キャンプは、主に1型糖尿病を持つ小・中・高校生を対象に全国40ヵ所以上で開催されています。日本では1963 年に丸山博先生が千葉県勝山海岸で開催したのが始まりで、現在も日本糖尿病協会の支援のもと、多くの子どもたち、医療スタッフや学生ヘルパー、キャンプOB・OG などが参加しています。キャンプでは自然の中のイベント(登山や海水浴、野外炊飯など)が企画され、またコロナ禍ではオンラインでのバーチャルキャンプが開催されました。期間は1日から7日までと様々です。未就学児や兄弟、家族が一緒に参加できるキャンプもあります。

キャンプの目的と活動内容

小児糖尿病キャンプの主な目的は『仲間づくり』です。学校では自分だけがインスリンをしますが、キャンプでは皆が血糖値を測定し、インスリン注射・注入をします。これらの体験を通じて子どもたちが孤独感を解消し、糖尿病と共に生きていく前向きなエネルギーを育むことを目指しています。また、孤立しがちな家族にとっても支援の場となっています。キャンプでは次のようなことを学び、話し合います。

  • 糖尿病について:血糖自己測定、インスリン療法(自己注射、ポンプ)、低・高血糖の対処法
  • 食事管理の実践:応用カーボカウント法を用いたインスリン量の調整の仕方
  • 生活スキルの習得:日常生活だけではなく、災害など非日常的な状況での対応方法
  • メンタルサポート:ライフステージ( 思春期、受験、就職、結婚)について、悩みの相談

キャンプの効果

キャンプに参加した子どもたちからは、「一人では不安なことも一人じゃない!と思うことで勇気を出すことができた」との声が聞かれます。実際にキャンプで初めて自己注射に挑戦し、成功する子どもも多いです。親から自立する一歩にもなります。また、医療機関からスタッフの参加も多く、小児科医と内科・糖尿病専門医が連携することで、小児科から内科へのスムーズな移行の一助にもなります。

インスリンメンター制度とOB・OGの役割

日本糖尿病協会は2015 年にインスリンメンター制度を開始し、キャンプや講演会を通じて糖尿病を持つ人を支援しています。メンターとは、仕事や人生の助言者・支援者の意味で、同じ境遇を経験した人が未経験者に自身の経験を語ることを通じて、相手の成長を支援する存在です。インスリンメンターとして活動するキャンプのOB・OG は多く、自らの経験を共有し、糖尿病を持つ人やその家族に勇気と具体的なアドバイスを提供しています。

参加方法と今後の課題

小児糖尿病キャンプやインスリンメンター制度には主催者や地域の糖尿病関連団体を通じて申し込むことが可能です。日本糖尿病協会のホームページにも申し込み方法が掲載されているので、参照してください。

小児糖尿病キャンプは、子どもたちとその家族が糖尿病と向き合いながら豊かな生活を送るための基盤を築く場です。このような取り組みをさらに拡大し、持続可能な運営体制を確立することで、より多くの糖尿病を持つ人がよりよい糖尿病ライフを送ることができるよう期待されます。

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