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糖尿病NEWS解説

iPS細胞の膵島移植の現状

No.3

1型糖尿病やインスリン分泌が枯渇した2型糖尿病では、インスリン療法が必須となる。しかし、罹病期間の長期化や血糖管理の不安定さから、高血糖だけでなく、無自覚性低血糖を呈するなど、血糖管理に難渋する患者も少なくない。

糖尿病の根治を目指す治療法として、これまで膵島移植が行われてきたが、ドナーの不足や免疫抑制剤の使用など、いくつかの課題がある。こうした背景から、国内外で膵島の再生に関する様々な研究が進められており、現在ではブタ膵島を用いたバイオ人工膵島移植や、iPS細胞(人工多能性幹細胞)、ES細胞(胚性幹細胞)による再生医療への期待が高まっている。

今回は、現在進行中のiPS細胞を用いた治験について述べる。2025年2月、京都大学において、iPS細胞から作製された膵島細胞の移植に関する国内初の治験が開始された。対象は、2001年に1型糖尿病と診断された40代の女性である。手術では腹部を切開し、皮下の左右にそれぞれ複数枚の膵島シートを固定した。術後1ヵ月時点で大きな安全性上の問題は認められず、患者は退院し、現在は免疫抑制剤を服用しながら定期的に外来通院している。今後5年間にわたって経過観察が行われる予定である。この治験では、計3名への移植が計画されており、第1例で安全性が確認されたのち、2例目以降は段階的に移植する細胞量を増やし、インスリン分泌量の変化や腫瘍化などの副作用の有無を評価する予定である。

今後の臨床応用の実現には、長期的な有効性の検証に加え、安全性の確認が不可欠であり、5~10年後の実用化が期待される。


東京女子医科大学 内科学講座 糖尿病・代謝内科学分野
望月 翔太

※ご所属・役職名は監修・取材当時のものです。

 

JP25DI00132