東京女子医科大学 内科学講座
糖尿病・代謝内科学分野 花井 豪
※ご所属・役職名は監修・取材当時のものです。
糖尿病性腎症を指摘された時に
注意することはありますか
No.3
東京女子医科大学 内科学講座
糖尿病・代謝内科学分野 花井 豪
※ご所属・役職名は監修・取材当時のものです。
糖尿病で高血糖状態が続くと血管が傷ついてしまいます。腎臓の血管が傷つくと、腎臓の働きが悪くなり、糖尿病性腎症を発症することがあります。糖尿病性腎症は、アルブミン尿と腎機能の程度によって、正常アルブミン尿期(第1期)、微量アルブミン尿期(第2期)、顕性アルブミン尿期(第3期)、GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)、腎代替療法期(第5期)の5つの病期に分けられます。早期の段階から生活習慣を見直すことで、腎症の進行予防が期待できます。
腎症早期の段階では、糖尿病の食事療法に従って、栄養バランスの取れた食事を、1日3回規則正しく摂ることが勧められます。多くの種類の食品をバランスよく、食物繊維を多く含む食品も摂り、動物性脂質を控えめにすることが大切です。食べ過ぎは血糖管理が悪化する原因になりますし、肥満にも繋がるため1日の摂取カロリーを守るようにしましょう。
腎症の進行を予防するには、血糖だけでなく、血圧の管理も重要です。塩分の高い食事は血圧上昇を招くため、食塩の摂取量は1日6g未満が目標です。減塩のためには、酢やスパイスを使うなどの工夫をしてみましょう。
腎症病期第1、2期では、タンパク質を制限する必要はないと考えられていますが、タンパク質の摂り過ぎは腎臓に負担がかかるため注意が必要です。一方で、特に高齢の方では、フレイルやサルコペニアを予防するために、鶏肉、魚、卵、大豆など良質のタンパク源を十分に摂ることも大切です。
適度な運動も腎症の発症や進行に重要です。1日の活動量を増やしたり、ウォーキングなどの運動を習慣にするようにしましょう。また、壁を使って安全にできるスクワットやつま先立ち、ハンドグリッパーを使った握力を付けることなどのレジスタンス運動もお勧めです。
腎症の発症・進展を防ぐためには、その状態に合わせた予防や治療が大切です。主治医にご自身の腎臓の状態を聞き、食事の注意点や運動の方法について相談するようにしましょう。
参考資料
JP25DI00132