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糖尿病アカデミー

糖尿病とかすみ目

                                                                        No.8

糖尿病の合併症としてよく知られている糖尿病網膜症。その自覚症状の一つ「かすみ目」は、糖尿病網膜症以外の目の病気でも起こることが知られています。自覚症状として「かすみ目」がある目の病気について、東京女子医科大学糖尿病センター 糖尿病眼科 北野滋彦先生にお伺いします。

「かすみ目」の見え方

視界の全体あるいは一部がかすんだり、ぼやけたりすることを「かすみ目」と言います。かすみ目と言っても、実は、一人ひとり見え方が異なります。ピントが合わない、白っぽくかすんで見える、薄い膜がかかったよう、はっきり見えないなど、表現も様々です。また、前から歩いて来た人の顔がわからない、新聞が読みにくい、テレビのテロップ(字幕)が読みにくくなったなど、生活の中で、実際の見え方の変化を説明して下さる方もいます。いずれにしても「かすんでぼやけて見えにくい」状態をかすみ目と言います。

かすみ目は現れ方に注意

徐々に目がかすむ─
老眼・近視、白内障、ドライアイ

「日によって目がかすむことがある」、「徐々に見えづらくなってきた」などの症状がある場合には、老眼、白内障、ドライアイなどが疑われます。

糖尿病があると老眼は早く現れることが多いようです。メガネやコンタクトレンズを使っている場合には、度数(老眼・近視)が合っているかどうか検査することをお勧めします。度の合わないメガネやコンタクトレンズを使っていると、目の疲労だけではなく、頭痛や首・肩こりの原因にもなります。

白内障は糖尿病のある方がかかりやすい目の病気の一つです。加齢に加え、高血糖によって水晶体が濁りやすくなります。そのため、糖尿病のある方は、ない方に比べて、白内障を発症する年齢が早いことがわかっています。血糖管理が悪いと白内障が進みやすいので注意が必要です。
また、糖尿病のある方では、涙の量やまばたきの回数が少ないので、ドライアイになりやすく、かすみ目を起こすことがあります。ドライアイは、涙と同じような成分の目薬を補給することにより、改善することがあります。

急速に目がかすむ─
緑内障、硝子体 (しょうしたい) 出血、加齢黄斑 (おうはん) 変性

突然、目がかすむ、見えにくくなった、見えない部分があるなどの場合は、重大な目の病気が潜んでいるかも知れません。急いで眼科を受診して下さい。
緑内障は、糖尿病がある方では、ない方より発症が多いことがわかっています。また、治療が遅れると失明に至ることもある病気です。緑内障は、かすみ目だけでなく、突然、激しい目の痛みを感じたり、視野に見えない部分があったり、きらきら光るものが見えたりします。
目の中に蚊のようなものが飛ぶのが見えたり(飛蚊症<ひぶんしょう>)、雲がかかったように見えたりするようであれば、硝子体出血かもしれません。目の奥で出血が起こっている可能性があるので、出血の原因を調べ、治療する必要があります。
直線のものがゆがんで見える、見たいところが見えない場合は、加齢黄斑変性が疑われます。
急激な目のかすみや見え方に変化があった場合は、早急に眼科を受診して、治療を受けることが大切です。

見え方の変化をチェックしましょう

どんな時に見え方が変わったと感じるでしょうか。新聞やテレビ画面の文字が読みにくい、段差がわからずにつまずいた、道で知り合いに会っても挨拶をしない(気が付かない)など、生活の中のちょっとしたことで、目の変化に気が付くことがあります。また、目の変化が片眼だけの場合、見える方の目が見えない部分を補うため、病気に気が付かないことも少なくありません。見え方の変化を自分で確かめられる、簡単な方法があります。壁掛けのカレンダーから1.5~2mの所に立ち、手で片眼をふさいで見てみましょう。

全部の数字が見えるか、また、縦横の線がゆがんでいないか、調べてみましょう。半年~1年に1度くらいの頻度でチェックを行い、見え方が変化していないか確認してみて下さい(図)。最近では、緑内障や加齢黄斑変性などの自己チェックの仕方を紹介しているホームページがあります。いずれも片眼ずつチェックを行い、異常があった場合には、早急に眼科を受診して下さい。

家族が「気付いてあげる」

実際にどのように見えているか(見えていないか)は、ご本人にしかわかりません。例えば、視力が1.0でも、高齢者ではピントを合わせるまで時間がかかったり、暗く見えたりして、視力ほど見えていないことが多々あります。日常生活でどこか不自由そうな場面はないか、周囲の方が「見えていない」ことに気付くことも大切です。
もし視野が狭くなっていたり、見えない部分があったりする場合には、周囲の方でできる簡単な介助があります。たとえば、歩く際に、見える方は見えない(見えにくい)側に並び、目の代わりをすると安全です。また、階段では見える方が前に立ち、その肩につかまりながら下りると歩きやすくなります。知り合いを見かけた時は、「〇〇さんが前から歩いて来ています」などと、お名前やいらっしゃる方向などを具体的に教えてあげることで、スムーズに挨拶や会話をすることができます。

定期的な眼科検診

人は情報の80%以上を目から得ていると言われています。目が悪くなると、行動が制限され、意欲の低下にもつながります。更に、食事療法や運動療法、服薬などの糖尿病の治療にも支障が出ることがあります。

糖尿病がある方は、糖尿病網膜症だけでなく、他の目の病気も起こしやすくなっています。また、加齢による目の変化も早くなる傾向にあります。小さな変化も見逃さずに、定期的に眼科を受診し、目の健康にも注意しましょう。

 

北野 滋彦(きたの しげひこ)
東京女子医科大学糖尿病センター 糖尿病眼科 教授

次回のテーマは「糖尿病とがん」です。

監修 内潟 安子 [創刊によせて]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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