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糖尿病性神経障害

監修:愛知医科大学医学部 内科学講座 糖尿病内科 准教授 神谷 英紀先生

 

糖尿病に特徴的な合併症である糖尿病性神経障害は、糖尿病網膜症や糖尿病性腎症とともに「糖尿病の三大合併症」と呼ばれています。ここでは、糖尿病性神経障害の原因、症状について知り、神経障害を予防するための方法を一緒に学んでいきましょう。

患者:とにかく足が痛くて、時々、地面に針が敷き詰められているのではないかと思うほど痛いときがあります。

医師:そうですか。寝ているときに足がつったりしますか?

患者:そういえば、半年くらい前からよく足がつるようになりました。それが何か関係があるんでしょうか?

神経に障害が起こる原因は高血糖の持続


糖尿病性神経障害は高血糖状態が長く続いた結果、全身の神経に障害が起こる合併症です。高血糖が長く続くことで、神経周囲の血管が傷んだりするだけでなく、神経そのものの性質が変わってしまい、神経の働きを悪くさせてしまうからです。さまざまな合併症の中で、多くの糖尿病患者さんに起こりやすく、糖尿病網膜症や糖尿病性腎症とともに糖尿病三大合併症と呼ばれています。

自律神経・体性神経(感覚・運動神経)に現れ、特に足先・足裏に注意


糖尿病性神経障害は主に2つの障害が発生します。

自律神経障害:胃腸や心臓などの内臓の働きを調節している神経に起こります。症状は、立ちくらみ、排尿障害、下痢、便秘、勃起障害などが現れます。

感覚・運動神経障害:手足の感覚や運動をつかさどる神経に起こります。症状は、足のしびれ、冷え、つり(こむらがえり)などが現れます。全身の神経の中でも足、特に足先・足裏から起こりやすいと言われています(図1)

図1 全身の神経の中でも足先・足裏から感覚・運動神経障害が起こりやすい

何かが足に貼りついているような違和感や、正座をしていないのにしびれる、チクチク(ジンジンなど)細かく刺すような痛みなど、人によってさまざまな症状が現れます。

どこの神経が障害されたかにより症状はさまざまです


全身にさまざまな神経障害が起こるため、症状は患者さんごとに異なります(図2)。例えば、頭部の神経障害が起こると外眼筋麻痺、顔面神経麻痺、突発性難聴のような症状が現れます。心臓の神経障害では立ちくらみや不整脈が、消化器の神経障害では胃の蠕動障害、下痢、便秘が現れます。その他にも排尿障害や勃起障害(ED)、手や足の神経障害によるしびれ、疼痛、感覚麻痺なども糖尿病性神経障害の症状です。

図2 糖尿病性神経障害の症状

足の変化を見逃さないようにしましょう


日々の生活の中で、足に違和感があっても、気のせいにして放置していると重症化してしまう恐れがあります。しびれやすい・しびれが続く、ほてる、つる(こむらがえり)、物に触れた時の感覚や熱さ・冷たさの感覚がおかしい、などの症状については、一時的な場合、見逃してしまったりします。起こった日付や間隔、症状を記録して、早めに医師に相談しましょう。

また、できるだけ早く発見するために、普段から自分の足(指の間や足の裏)を観察しましょう。自分で見えないところは鏡に映す、家族に見てもらうなどして確認するようにしてください。足の変色やしびれ、動かしたり物を触ったりした時の感覚などに違和感があれば、遠慮なく医師や看護師に相談して足を見せてください。

初期の症状を見過ごしてしまうと、次第に足の感覚が鈍くなり、足の皮膚が潰瘍<かいよう>・壊疽<えそ>へと進行してしまう場合があります。万が一、発見や治療が遅れてしまった場合は足の切断が必要になる場合もありますので、足の変化には特に注意が必要です。

予防の基本は血糖コントロール


糖尿病性神経障害を予防するための基本は血糖コントロールです。また、足の神経障害などが起こった後も、血糖コントロールをよくすることで症状がなくなったり軽くなったりします。しかし、血糖コントロールが悪いままでいると、高血糖状態により足のしびれや痛みなどが悪化するだけでなく、足の感覚が麻痺し、けがややけどに気付きにくくなり、足潰瘍・足壊疽が起こりやすくなります。普段から食事療法、運動療法、薬物療法を続けながら、定期的に通院して診察を受け、血糖コントロールをよくしていきましょう(図3)。

図3 良好な血糖コントロールのために

日常生活でのフットケアが大切


足の神経障害を予防するためには、日常生活の中でけがややけどに注意し、感染症を防ぐフットケアを行うことが大切です。次のようなことに気をつけましょう。

足に合う靴をはきましょう

足に合った靴をはくようにしましょう。自分の足のサイズに合わない、大きな靴やキツイ靴は無理にはかないようにしましょう。慣れないヒール靴で指先を痛めたり、小石などの異物が靴に入り、足を傷つけたりしないよう注意してください。

低温やけどにご注意ください

糖尿病患者さんは足が冷えやすい人が多いのですが、足の神経障害があると熱さに鈍感になります。低温やけどを防ぐために、こたつや湯たんぽは避けましょう。また、入浴時のお湯の温度に気をつけましょう。

足を清潔に保ちましょう

普段から足の裏、指の間を丁寧に洗いましょう。洗った後は水分をよくふきとります。皮膚が乾燥しやすい人は保湿剤を塗りましょう。

コラム

自律神経障害についても、生活の中で確認していきましょう


糖尿病性神経障害について、今回は足の感覚・運動神経障害を中心にまとめましたが、自律神経障害についてもここでお伝えしておきます。自律神経は内臓の働きを調節する神経で、自分の意志とは関係なく昼夜働き日々の活動を支えています。

自律神経障害が起こると、起立性低血圧、胃不全麻痺、下痢、便秘、膀胱機能障害、性腺機能障害、発汗異常、瞳孔異常などのさまざまな症状が現れます。このような症状は日常生活に悪影響を及ぼしますので、普段から自律神経障害を予防していくことが大切です。

また、日本ではあまり言われていませんが、欧米などでは突然死との関係性が報告されている心血管系の自律神経障害もあります1)。症状としては立ちくらみや不整脈などです。

症状が起こるのをいかに防ぐか、そして出てしまった症状を重症化させないためには、足の場合と同じように高血糖の是正、良好な血糖コントロールの維持が重要です。医師の指示に従って治療を続け、血糖コントロールをよくしていきましょう。

◆引用文献

1)下田博美他:糖尿病の最新治療10(3):140-145,2019

 

◆参考文献

公益社団法人日本糖尿病協会 編:糖尿病連携手帳 第4版, 2020

日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療の手びき2020(改訂第58版)、南江堂、2020


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