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糖尿病とともに生きる-連載ブログ第23回:ボディイメージと糖尿病生活

皆さんは痩せたいと思ったり、理想の体型を手に入れるためにダイエットやトレーニングをしなければならない、というプレッシャーを感じたことがあるでしょうか?サイクリングの世界でも体重が成績に影響する要素の一つとして考えられ、痩せることへのプレッシャーはプロサイクリングの風潮として広く浸透しています。今回のブログではそのようなプレッシャーへの対処法や、健康な身体を手に入れるための秘訣をジャスティンさんが紹介しています。ぜひブログをお読みください。

 

身体は周囲の人たちや社会の人々が一番簡単に見てとれる外見です。身体は時に私たちの心をだまし、あたかも身体が私たちの全人格を反映したものであると思わせます。そして、周囲の人たちに好まれるようなボディイメージを維持しようとすることは、大きなストレスとなることがあります。

身体のふるまいがほかの人たちと少々異なる糖尿病とともに生きる私たちの場合は、このストレスはさらに大きくなる恐れがあります。

プロサイクリングの世界では、体重はアスリートの成績を左右する極めて重要な要素です。選手が軽ければ軽いほど、レースの坂道で引っ張りあげなければいけない体重が減ります。このためチームやコーチは、極めて細い体になり、なおかつそれを維持するよう、アスリートにプレッシャーをかけます。私もプロを目指していたときと、プロになってからは毎日3回体重を測っていました。

朝食を食べる前に一度、トレーニングが終わったときに一度、寝る前にもう一度。そうすることで、自分の体重の方向性や相関関係をグラフにして把握することができました。実際、とても引き締まった体形と軽い体重を手に入れました。それで数週間にわたり数本のレースはよかったのですが、長続きしませんでした。この時期、体重を減らすことで、ストレスと不安がどんどん増えていきました。実際、低体重だったときは何度も具合が悪くなり、何週間も自転車に乗れないことすらありました。長期的には、減量の代償がそのメリットを上回ったのです。

しかし、痩せるということは短期的な成績向上の手段であり、痩せるプレッシャーはプロサイクリングの風潮として広く浸透しています。私と同じように絶えず痩せていたいという願望から生じる負の影響に屈してしまう選手は、今もなお少なくはありません。私たちサイクリストを取り巻く風潮がプレッシャーとなり、パフォーマンスを良くしたいという気持ちより、ただ痩せたいという気持ちのほうが勝るようになるのです。

このようなボディイメージを追求するプレッシャーの風潮は、サイクリング以外の生活にも存在しています。このプレッシャーへの対処法しだいでは、糖尿病とともに生きる私たちは、糖尿病ではないほかの人より遥かに大きな影響を受けることになります。私たちの身体にはほかの人たちよりほんの少し多くの栄養とケアが必要ですから、私たちにとって健康であることは大変重要です。ほかの人たちが私たちに対して良いと感じることが、必ずしも私たちにとってベストであるとは限りません。極端に痩せることは、実際には健康にとって逆効果だということに私は気づきました。私はオーストラリアや米国や日本への遠征をとおして、一般社会の大衆文化に、「こんなふうに見られたい」という潜在的なプレッシャーがあることに気づきました。他人から「こんなふうに見られている」のだと思えると、幸せになれると思わされているのです。心理学には「感情予測」という理論があります。これは、将来に何かが起きたときに感じる気持ちを予測して徒労に終わることを意味します。この感情予測にボディイメージが加わると、私たちはほかの人たちと自分を比較してしまうことにより、より危険な道をたどる恐れがあります。終わりのない道のりが絶えず私たちを不安に陥れるでしょう。ボディイメージに感情予測を応用すると私たちの心はだまされ、「こんなボディイメージに、体型に、サイズになったあかつきには幸せになれる」と考えるようになるからです。このような考え方では、自分の幸せを将来の出来事に結びつけてしまい、今このときに幸せを感じられなくなったり、ネガティブな感情に支配されてしまいます。ボディイメージは生まれてから死ぬまでに絶えず変わるものですから、これに感情を結びつけても虚しいだけです。まるで、一定の目標/レース結果を達成するまでは自らに幸せを感じることを禁じるアスリートのようです。これでは、トレーニングや準備のときに幸せを感じることはできません。ひいてはこれがアスリートの成績に悪影響を与えてしまいます。

糖尿病とともに生きる私たちは、ある特定の体型になることよりも健康であることを優先させるべきです。健康的な身体にはさまざまな体型やサイズがあり、精神状態が健康を大きく左右します。目的や意欲や、良好な人間関係を通じて、毎日の生活にポジティブな気持ちを持つように心がければ、その副次的な効果として健康的な身体が手に入るものです。このような形で健康的な身体を手に入れれば、見た目をひどく重視することから生まれるストレスや不安や失望感から解放されます。人生で本当に大切なことは心の中で感じるものであって、外から見えるものではありません。もちろん、健康的な身体でいることは、血糖値やHbA1c値のコントロールの改善にもつながるでしょう。

治療とケアに専念してくれる医師や医療従事者の方々は、身体を健康にする方法を示してくれるありがたい存在です。食事や運動の内容を健康的で楽しめるものにすれば長続きしますし、幸せを感じるためにただひたすら最終結果を待つのではなく、いつでも幸せを感じていられます。

皆さんがご自身の身体と、健康な身体とは何かを理解し、感謝するにあたって、私のスポーツの経験が役立つよう願っています。

ジャスティン モリス氏 略歴:

10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。

その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。

2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。

連絡先:

Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram: @justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com

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