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糖尿病とともに生きる-連載ブログ第22回:糖尿病とともに生きる人生で失望と向き合うには

誰もが落ち込んだり、悲しい出来事があってネガティブな感情に支配された経験があると思います。そのような感情があふれ出ると、生活のほかの部分にも良くない影響を与えることがあります。

そんな時、ジャスティンさんは心理学的な手法の一つで思考を鍛えるトレーニングである「区画化」にチャレンジしているそうです。「区画化」とは一体どのようなトレーニングなのでしょうか。

ぜひ今回のブログをお読みください。

いつもブログをお読みくださりありがとうございます。今年は誰にとってもいつもと違う年であり、今までの生活で当たり前だったことがとても難しく、危険なこととなっています。私の場合は旅行をすることがいつも当たり前でしたが、今年は、今まで自由に動き回れていたことがとてもありがたいことだったのだと思い知らされました。また、移動できないため家族と離ればなれでいるのはとても寂しいことです。家族がアメリカで暮らしている妻のモーガンは非常に悲しんでいます。

このような状況に直面したときの失意や絶望は、私たちの人生に暗く深い影を落とします。プロスポーツの世界にいた私は、悪いレース結果に失望して将来の展望が見えなくなり、考え方や感情をすり減らしてしまうのを見たり、経験したりしてきました。さらにこれは人間関係や生産性、気分に影響します。糖尿病とともに生きていると、感情があふれ出て生活のさまざまな局面に影響することがよくあります。糖尿病の管理がうまくいかない日は活力が不安定になり、自分自身に苛立ち、自転車のパフォーマンスが悪くなり、仕事の集中力が低下し、不機嫌になります。

私が学んだこのような状況に役立つ心理学的手法に「区画化」というものがあります。これは、生活の中に健全な「部屋」を作って感情をしまうという方法です。さまざまな種類の部屋を用意することで、とりわけ糖尿病管理にも役立つと思います。糖尿病の管理がうまくいかない日は、人生のあらゆる点で自分は駄目な人間だという考えにとらわれます。感情があふれ出て、生活のあらゆる側面にも影響がおよびます。自分自身にとって、人間関係にとって、耐えがたいことです。しかし、糖尿病の感情をしまう「部屋」を心の中に作れば、糖尿病や生活のさまざまな問題について明確な判断を下すのに役立ちます。実践するのは大変ですが、健康的な生活を送るために理にかなっています。糖尿病の管理がうまくいかない日があるからといって、自分が愚かな人間、弱い人間、悪い人間だというわけではありません。糖尿病の管理がうまくいかない日、ただそれだけのことです。生活の一コマで感じる気持ちをその一コマにしまいこむように思考を鍛えるトレーニングは、頑張ってやるだけの価値があるメンタルチャレンジです。

ある出来事で芽生える感情を、その出所にあたる自己の内面にしまう能力を磨けば、大きな助けとなります。例えば、学校や大学の試験結果でがっかりすることもあるでしょう。でも、そのような試験結果は、ある1つの教科における個人の知識のスキルを示しているのであって、自尊心や親切さや強さ、勉強への意欲を示しているのではありません。人生の一部分で失望しても、別の部分で自信を失わないようにしましょう。スポーツ選手のように、レース結果が悪くて落ち込んでも、その感情を家庭生活やトレーニングや社会生活に引きずらないようにしたいものです。負の感情は色々な部屋に入っています。ネガティブな気分になることがあってもしかたありませんが、負の感情は元ある場所にしまうよう心がけましょう。勿論これはとても難しい作業で、「言うは易く行うは難し」です。しかし、心理学の教育を受けた人など、手を差し伸べてくれる専門家がいます。ときにはとても親切で知識が豊富な友人が、失望してもいきいきとした人生を続けるための方法を見つけるのを手伝ってくれることもあるでしょう。

私も落ち込んでネガティブな気分に支配された経験がたくさんあります。最近私は、オーストラリアの大学で心理学の2つ目の学位を申請しました。2つ目の学位によって将来的に多くの扉が開くと信じていましたし、申請したときは受かる自信満々でした。しかし後から、私が学部生だったときの成績ではこの学位に受からないと告げられました。すると失望が部屋を乗り越え、ビジネスマンとして、アスリートとして、人としての自分の能力を疑ってしまいました。ところがその後、大学の学位は得られませんでしたが、それ以外の生活面は順風満帆です。それはその時抱いた失望を「大学生活」という部屋にしまっておいたから大丈夫だったのです。学位はいつでも再挑戦できますしね!

今年は特にそうですが、誰しも人生において、いくつもの失望に毎年直面していると思います。落ち込む気持ちは辛く、自然なことですが、落ち込むことで既に損をしているわけですから、それ以上損はしたくありません。生活の一部分で暗い考えを抱いたり、悪口を言われたり、嫌な気分になったりしても、人生の何もかもが駄目なわけではありません。糖尿病とともに生きる生活は、私たちにこれを気づかせてくれると思います。血糖値が悪くても、血糖値は血液中の血糖の量を告げるものに過ぎません。人の性格や強さを告げているのではないのです。

このパンデミックがいずれ終わるように、失望もいずれ終わります。終わるまでは、元気で前向きな気持ちを絶やさず、お互いに助け合いながらこの困難な時を乗り越えましょう!

ジャスティン モリス氏 略歴:

10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。

その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。

2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。

連絡先:

Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram: @justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com

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