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糖尿病とともに生きる-連載ブログ第18回:不確実な状況の中で挑んだアラビアンエピックマウンテンバイクステージレース

不確実な状況の中で、恐れや不満、不安といったマイナスな感情に支配され、適切な判断ができなくなってしまったことはありませんか?
ジャスティンさんは今回のブログで、ヨルダンで行われたマウンテンバイクレースでの経験から、不確実な状況の中にあっても、いかに感情に振り回されずに、落ち着いて意思決定を行うかについての秘訣を紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

今回は、新型コロナウイルスに関する内容とは関係のないものについて書きたいと思います。
混乱している状況の中、さまざまな情報が飛び交っていると必要のない不安を感じてしまい、状況の解決には逆効果になってしまうこともあります。
しかし、このような大変な時でも、精神面での健康を維持するための方法を紹介していきたいと思います。

今年の2月に、中東に位置し、イスラエル、エジプト、サウジアラビア、シリア、レバノンに隣接するヨルダンへ行ってきました。
ヨルダンには酷くトラウマに残るような、しかしながらとても興味深い人類の歴史があります。
今でも隣国が戦争をしているような環境で、ヨルダンは多くの悲劇に囲まれた地域でありながら、正常化や平和を維持するという重要な役割を果たしてきました。
2020年にヨルダンは、貧困と戦争から逃れた周辺国の難民を100万人以上その境界内に受け入れました。
それはヨルダンの全人口の10%に及びます。
この国は他国への慈悲深い政策とその歓迎的な姿勢で昨今の歴史ではよく知られています。

ヨルダンのホスピタリティは、国際的な自転車競技の開催にとても適しています。
今年はアラビアンエピックマウンテンバイクステージレースの第2弾でした。
このレースは四日間にわたり開催され、小さいけれどもさまざまな地形に富んだ国を走りました。
首都アンマンの北部にある緑豊かな農地から、雪に覆われた山々を通り、地球で最も低い地点と言われる死海、そして砂漠を超え南部にある古代都市ペトラまでを走りました。
サイクリングツアーレースの主催者にとって大きな変化のある環境で開催するレースは、ロジスティックな準備が非常に大変です。
サッカーやテニスと違い、サイクリングレースは街、地形、地域の違いにより状況が変化します。
サイクリングがスポーツとして確立されているヨーロッパやオーストラリアのような国では、このような変化は理解されやすく、イベントもあまり混乱することなく開催することができます。

しかし、アラブ諸国ではサイクリングは珍しい交通手段でしかなく、アスリートが競う競技スポーツとしての認識はありません。
そのため、数日間にわたるアラビアンエピックマウンテンバイクステージレースの準備を行う組織にとっては、とても大きな挑戦でもありました。
ヨルダンの人はホスピタリティや親切さ、食べ物ではよく知られていますが、信頼性や迅速性ではあまり知られていません。
選手や主催者にとってアラビアンエピックとの交渉が一番の難題でした。
私とチームの選手達が空港に到着すると間違ったホテルに案内され、そこには食べ物がありませんでした。
それ以外にも、予定していた一番最初の選手との打ち合わせが予定より一時間半も遅れました。
これはまだ初日の出来事でしたが、同様のことが続いて起こりました。

糖尿病を持つ身として、健康維持のための生活習慣やスケジュール管理の大事さはよく理解しています。
この状況の中で、私は計画的な食事時間やレース時間の管理ができず、そのことはストレスとなり血糖値にも影響がみられました。
時差の影響もあり血糖値の管理はより困難なものとなっていました。
私は毎朝通常よりも高い心拍数、胸を締め付けられるような感覚と息切れを感じました。
これは私の血糖値にも自転車でのパフォーマンスにも影響を及ぼしました。
最初のステージはアンマン北部にある森林周辺の24kmのレースでした。
私は脱水症状、ストレス、緊張を抱えながら、この先どうなるのかと不安を感じていました。レースは予定の2時間遅れで開催されました。
私のパフォーマンスは普段と比べるとそれほど良くなかったと思います。
しかし、意識的に頑張ってこの状況に対する不満をペダルを踏む力に変えたのです。
それが功を奏したのか調子はどんどん良くなり、2位でゴールすることができました。

レースが進むにつれ、スケジュールの不安定さに私はますます不満を覚えるようになっていました。
三日目にはモントリオールという町の古いホテルに泊まっていましたが、そこにはあまり食べ物がなく、次の日のレースのコースも変更になるなど、不安定な状況でした。
私は精神面でも体力的にも滅入ってしまいそうでした。
そのような感情は意思決定能力をもだめにしてしまいそうでした。
皆がそれぞれに不満をぶつけている状況で、私も同じような状態でしたが、何とかその感情に抵抗しながら、アスリートとしてのトレーニングや高校生時代の軍指揮官候補生での経験を思い出そうとしました。それは、ストレスが多く不安定な状況において、感情によってではなく、事実ベースで意思決定を行うということでした。
不確実な状況で感情に任せた意思決定をしてしまうと、それは状況をより悪化させしてしまいます。
この状況に私はとても怒り、不満を感じ、少しの恐怖を覚えていました。
しかし、そこで私が感情に任せて行動をしていたなら、それは確実によくない方向に向かっていたでしょう。
落ち着いてよく考えた決定を行えば、それは自分や周りの人のためになる行動となるのです。

私たちの血糖値は、体がどのように恐れ、不安、怒りに反応するのかを示してくれます。
どんなにストレスがたまる状況でも、皆さんには落ち着いて安定した精神を保つことを一所懸命に頑張ってほしいです。
口で言うほど簡単ではありませんが、皆さんにはそれぞれ自分に合った心を落ち着かせる方法があると思います。
瞑想や何かスピリチュアルなもの、信仰、あるいはサイクリングをする私のように運動を好む人もいると思います。

私は運よく冷静さを取り戻すことができ、レースとレースが行われた素晴らしい場所に集中することができました!
慌ただしい時には暗雲に光明を見いだすのが難しくなってしまうこともありますが、ゆっくりと落ち着いた精神状態で自分の状況を見ることで、ほんの少しでも幸せを見つけ、どんな状況の中にも良いことがあるのだと気が付けるようになります。

精神的、肉体的に厳しい状態であったにも関わらず、私はアラビアンエピックマウンテンバイクステージレースを完走することができました。
四日間にわたる素晴らしい国でのレースで、私は2位の成績を残しました。
今回のレースへ参加できたこと、さまざまな経験から学びを得られたことをとてもうれしく思っています。

ジャスティン モリス氏 略歴:

10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。

その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。

2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。

連絡先:

Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram: @justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com

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