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【インタビュー】患者として、医師としてポジティブに生きる南 昌江先生(前編)

インスリン発見100周年を記念して、糖尿病専門医でありご自身も糖尿病患者さんである南 昌江先生にインタビューを実施し、糖尿病と糖尿病治療についての思いをご自身の経験を交えて語っていただきました。1型糖尿病を持つ当事者として、また医師として生きる先生のポジティブなメッセージを前後編に分けてお届けします。前編は、印象に残る患者さんの思い出や医療機器の進化、患者さんを取り巻く環境の変化についてのお話です。

八木田 正則

医療法人 南昌江内科クリニック 南 昌江 先生

中学2年生で1型糖尿病を発症。

福岡大学医学部卒業後、東京女子医科大学付属病院、九州厚生年金病院、福岡赤十字病院などの勤務を経て、1998年福岡市に南 昌江内科クリニックを開業。

日本内科学会内科認定医、日本糖尿病学会専門医、日本糖尿病学会九州支部評議委員、福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学講座 臨床教授。

著書には「わたし糖尿病なの」(医歯薬出版:1998年出版)、病院スタッフと共著のレシピ本「アイディアいっぱい糖尿病ごはん」(書肆侃侃房:2011年出版)、「わたし糖尿病なの あらたなる旅立ち」(‎医歯薬出版:2018年出版)がある。


――これまでに患者さんと向き合う中で、印象に残っている患者さんについて教えてください。

当時60代で、末期の肝臓がんを患っていた1型糖尿病の患者さんがいました。がんの治療でステロイドを使うと血糖値の変動が大きくなります。がんの治療と糖尿病の治療はどちらが大事かとなると、やはりがんの治療が優先されますが、血糖値のコントロールも必要です。

1型糖尿病で、長年血糖コントロールをしっかり頑張ってこられて、がんの治療で乱れた血糖を何とかしたいということで、インスリンポンプの導入を提案しました。すると、とてもコントロールが良くなり、本人も喜んでくれました。最後まで自分で血糖値をコントロールしたいという強い気持ちを持っている方でしたね。

――その方のように、自分の病状を自分でしっかりと見つめたいという患者さんが多いのでしょうか。

私たちは常に「病気と向き合うように」と患者さんに伝えています。血糖値に振り回されるのではなく、病気を前向きに捉えて受け入れて、自分の身体と上手に付き合っていくということですね。

どうしても発症したばかりの頃は、患者さんはなかなかそのようには考えられず、「なぜ自分がこのような病気になったのか」という気持ちになりますが、それは当然のことです。私が子供の頃から主治医もしてくれたことですが、やりたいことのためにインスリンをどう打てばいいのかを一緒に考え、その人がやりたいことを病気が理由で諦めさせないようにしています。そうすると患者さんは、そのうち慣れてきて自分で血糖値のコントロールができるようになります。やがて自分の身体のことを自分で分かってきて、「自分でコントロールができる」と思うようになります。そうすると自分で病気を受け入れ、向き合えるようになりますから、私が言うことも少なくなります。

――冒頭のお話の中にインスリンポンプが出ていましたが、糖尿病治療における医療機器の進化についてお感じになられることはございますか。

そうですね。とても進化が激しいので、私たちもついていくのに必死です。私は糖尿病を発症して今年で44年ですが、最初の頃はガラスの注射器を使っていて、毎回煮沸消毒をしていました。それがシリンジの注射になり、その後にノボペン®が出てきて、とても便利になりました。旅行に行くにも昔は注射器を持って行かなければならなかったのに、ペンだけを持っていけば良くなったので、ノボペン®が出てからはとても楽になりました。

そして2000年頃から、インスリンポンプの精度が良くなってきました。さらに2015年からは、リアルタイムで血糖値が分かるものとポンプが合体したもの (SAP) が出たので、さらに便利になりましたね。

私は44年間の中で、機器やインスリン製剤の進化を全て見てきました。自分が糖尿病患者なのでやはり便利なものを使いたいですし、コントロールが良くなるものを使いたいと思います。しかし私はインスリンポンプを使うことに最初はとまどいがありました。実際に使ったのは、インスリンポンプが出てから数年経ってからのことでしたね。

――患者さんに勧めるにも、ご自身でしっかりと確認してからということですね。

インスリンポンプがなくてもペン型注入器で十分に血糖コントロールができるので、必要ないかと思っていました。しかし患者さんに説明をするときに、きちんとメリットやデメリットを理解していないといけないと思い、試してみるととても便利でした。それからはずっとインスリンポンプを使っています。

――患者さんを取り巻く環境の変化について、先生がお感じになられていることをお聞かせください。

医療技術の進歩に比べたら、やはり社会の理解はまだまだだと思います。糖尿病という病気のイメージの問題かもしれませんが、糖尿病と聞くと、おそらく一般の方はマイナスイメージを持たれる方が多いと思います。1型糖尿病と2型糖尿病との違いをはっきりと分からない人も多くいます。一般的に糖尿病というと本人の生活習慣の管理不足からくる病気というイメージがまだまだあると思います。

しかし最近はスポーツ選手など、ご自身が1型糖尿病だと公表している人も増えています。ですので、1型糖尿病に関しては以前に比べれば随分と、世間の理解も進んできていると感じています。

――世間の理解が進まないことで、患者さんが不便に感じていることはありますか。

若い方は、「会社や友達には言いたくない」と言いますね。とくに恋人やパートナーにはなかなか言いづらいという患者さんもいらっしゃいます。もちろん糖尿病を理解してくれる人も多いですが、中にはネガティブに捉える人もいます。特に注射をしていると聞くと、重症に思われてしまいます。

――先生は、そういう方々にどのようなお言葉をかけていますか。

クリニックへ結婚相手を連れてくる人もいます。そういう人には妊娠や出産も問題ないことを説明しますし、本人が低血糖のときは助けてあげてと伝えます。病気があることを理解してほしいと思いますが、一般的に、周りに病気のことを知られたくないという人はいます。確かに周りに病気を伝えたところで、周りは何も変わりません。おそらく周りに言いたくない人は、自分の中に辛さなどがあると思いますが、周りに言った方が気が楽になると思います。

――結婚相手を連れてくる人もいらっしゃるなんて、患者さんとは密な関係でいらっしゃるのですね。

長い方はもう30年のお付き合いになる方もいます。中には子供だった人が今では医者になっている人もいます。また、子供だった患者さんが、結婚して、出産される方も増えています。その方の人生に寄り添いながら付き合っていくという感覚ですね。

――病気という共通体験があるからこそ、共感が大きいのかもしれませんね。

私は診察室にいらした患者さんとお話しているだけですね。元々、人が好きなので、患者さん一人ひとりと向き合いお付き合いしていくという感覚です。病気を診るというよりは、その人がより良い人生を歩んでいくためのお手伝いができればと考えています。

 

<後編に続く>

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