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「次のレースまで」キング・オブ・マウンテン (KOM)

ダヴィ ロサーノ選手

私はステージ1から最終ステージまでずっと、キング・オブ・マウンテン (KOM)のジャージを着て優勝への得点を獲得するためにアタックを仕掛けていました。

レースが終わり、私は表彰台に立ち、チームのためにもうひとつのジャージを獲得した勝利を祝いました。

しかし2時間後、車でホテルに戻ろうとしているときに、正式なレース結果を聞きました。私は2位でした。私の得点は最終的なレース優勝者と同じでしたが、彼は私より先にフィニッシュしたので、彼がキング・オブ・マウンテンのジャージを授与されました。

私たちはルールをチェックしましたが、ルールに間違いはありませんでした。勝者は私ではなく彼でした。私にはどうしようもありませんでした。いや、やれることはあります。次のレースへの励みにすればよいのです。僅差だったわけですから、また次回のレースで優勝を狙いたいと思います。

ツール・ド・ハンガリーでは毎日表彰台に上がることができて本当によかったです。ほかの選手たちからの私への敬意が少し増したように感じました。私だけでなく、チーム全体への敬意も増したと思います。それは私が毎日ジャージを獲得できたことと、私たちチーム ノボ ノルディスク全体のパフォーマンスのおかげだと思います。

このチームにいることはとても特別なことです。糖尿病であっても自分が望む人生を送ることが可能だということを世界に示し、私たちを見守ってくれる多くの人々へ、単なるレース結果だけでなく勇気も届けられるのです。先週のレースのような結果を得ることやルワンダでの優勝、シャルル プラネ選手のレース展開、そういったことが多くの家族に希望を与えています。このような感情を抱けるのは非常に素晴らしいことです。

実際、私の家族もそうやって勇気づけられました。母は私が1型糖尿病だと診断されたときに、私が父のようになるのではないかと恐れました。私の父も1型糖尿病で、若いときに適切な教育を受けなかったため、最初のころは糖尿病管理に大変苦労したのです。

私が診断を受けたとき、母は私が父と同じ苦労をするだろうと考えました。私が診断を受けたのは22歳と、かなり遅い方です。その頃、私は既にマウンテンバイクのプロ選手としてレースに出場していました。

私の診断はニュースになりました。ワールドカップの代表チームに選ばれた前日だったからです。ニュースはあちこちに知れ渡りました。チーム ノボ ノルディスクの元選手の1人であるハビエル メヒヤスさんが私に電話をくれ、チームのミッションについて話し、あきらめるなと言ってくれました。

母と私はバルセロナでフィル サザーランドさん(現チーム ノボ ノルディスクのCEO 兼 共同創設者)と会いました。私は英語をほとんど話せませんでしたが、彼が本当に私の助けになりたがっていること、そして彼が確信をもって私に話をしてくれていることを感じ取ることができました。その気持ちは言葉以上のものでした。

英語を話せない母は「彼は何を言っているの?あなたが普通の生活を送れるようになると言っているの?」と私に尋ねていました。

フィルさんは私をまず育成チームと契約させ、3カ月後にはプロチームとの契約を結びました。

これを機に私の家族の生活はすっかり変わりました。現在、父は糖尿病管理が上手になり、母は父のことを心配しなくなりました。

父は私がサイクリングの世界で活動していることを見て、大変多くのモチベーションを得ています。私たちはチームとして世界最高峰の大会で競争し、ミラノ〜サンレモをはじめとする多くのレースでブレイクアウェイ(逃げ集団)に加わること、糖尿病が決して人生における制限とならないことを示しています。

正直なところ、私は自分のことを糖尿病を持つサイクリストだと毎日考えているわけではありません。アスリートとして努力している人は良い成績を出したいと常に願うものです。私も一生懸命練習しているときはサイクリングのことだけを考えます。しかし、レースでマウンテンジャージを着たり、ブレイクアウェイにいるときなど、何か重要なことを行っているときは、ある時点でチームのミッションについて考え始めます。自分が何か大切なことをしているのだと考えるようになります。これは本当です。ブレイクアウェイにいるときには、私たちが勇気を与えている世界中の家族のことをしっかり考えます。ジャージを着ているときやレースに勝つときには、子供たちやその保護者の方からのたくさんのメッセージを胸に走り、私たちが行っていることがどれほど大切なことかを実感しています。

人生では、目の前で扉が閉まると誰しも気分が沈むものです。しかし、ときには人生の素晴らしい出来事がそこから始まることもあります。離婚した人がある日突然、理想の女性と出会うようなものです。私も糖尿病の診断を受けたときは世界の終わりのような気持ちになりましたが、チームと出会って自分のキャリアを継続し、人々を勇気づけることができたのです。

逆境に立ち向かう姿勢が大事だと思っています。糖尿病と診断されて落ち込むのは無理もありません。周囲の人たちの消極的な意見や、できないことばかりを耳にしてしまうと、糖尿病と診断を受けた人は何もできないような気分になります。しかし、結局は自分次第です。何かしたいことがあるのなら、それは必ず実現できます。100%できるのです。

 

1.レースで山の上に設置された地点を先頭で通過したライダー、もしくは数カ所通過したときに与えられるポイントを最も獲得した選手に与えられる賞のこと。キング・オブ・マウンテンの略。

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