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糖尿病とともに生きる-連載ブログ第16回:1型糖尿病とともに世界選手権を走る‐ベストを尽くせ!

ジャスティンさんはマウンテンバイクマラソン世界選手権に、夢であった母国オーストラリアの代表として出場しました。

全長97km、4200mもの高さを登るただでさえ難しいレースに、1型糖尿病とともに挑戦したジャスティンさん。

「1型糖尿病は課題・チャレンジではあるけれど、何かをできなくするバリアではない」と常々語る彼が、世界選手権という場でどのような課題に直面し乗り越えたのか。

是非、ブログをご覧ください。

 

 

プロのサイクリストになることを夢見ていた高校生のころ、私にはもうひとつの夢がありました。

それは、愛するスポーツで、母国オーストラリアを代表する選手になることです。

ほとんどのアスリートにとって、母国を代表してオリンピックや世界選手権に出場することは生涯の目標です。私も例外ではありませんでした。

特にシドニーオリンピックがきっかけで、初めて一生をかけてスポーツを追求しようという意欲を持ちました。

2020年に日本で開催されるオリンピックもまた、多くの方にいつか日本代表になるという夢を与えるものになると思います。

私が母国の代表になるまでの道のりは、決して平坦でも短くもありませんでした。

プロサイクリストを辞めた後も、オーストラリア代表になるという夢は、どこか心の片隅に残っていましたが、年を重ねるにつれ、その夢から遠ざかっているように感じていました。

ところが今年、33歳になった私に、この夢を追いかけるチャンスが訪れました。

私は2015年からオーストラリアの「マウンテンバイクマラソン」選手としてのポイントを稼いでおり、

昨年、好調な成績をあげたことによって、2019年のオーストラリアの世界選手権代表に選出される道がみえてきたのです。

そして私は仕事と生活を犠牲にしてハードなトレーニングを重ね、ついに代表に選出されました!

代表への選出を知らせるメールを「サイクリング・オーストラリア」(オーストラリア自転車競技連盟)から受け取ったときには、夢のような気分でした。

その夜には、妻と特別なディナーでお祝いしました。19年間抱き続けてきた夢が現実となった瞬間でした。

ただし、代表への選出は出発点にすぎません。レース会場まで移動し、実際に出場するまでに、多くの困難に立ち向かい、いくつもの教訓を得なくてはなりませんでした。

2019年のマウンテンバイクマラソン世界選手権は、スイスのグレヘンで開催されました。この美しい村はスイス・アルプス山脈の高地にあります。

出場する187人の選手は、97kmのコースの中で標高4200m (エベレスト山の標高のほぼ半分!) 分の距離を登りました。

そのため、このレースのスタートラインにたどり着くまでに、選手にとっては大きな課題・チャレンジが数多くありました。そして1型糖尿病を抱える私にとって は、この状況はさらに厳しい試練として立ちはだかったのです。

その試練とは大きく分けて次の4つのポイントになります。

 

1. 標高:

標高の高い場所でのレースに参加した経験は過去に一度だけあります。その時には、血糖値のコントロールに大変苦労しました。

空気の薄い高地では、体が普段とは異なる働きをしなければなりません。そのため、インスリンに対する感受性に影響が生じます。

今回、レース開始までのグレヘンでの滞在期間はわずか4日でした。私はその期間に、この標高に最も適したインスリンの投与方法を見つけるためにベストを尽くし ました。母国にいる担当の医療従事者と電話やメールで相談を続け、高い標高でも血糖値をベストの値にコントロールできるように何度も確認しました。

 

2. 時差:

時差については多くの経験がありました。時差は血糖値のコントロールと疲労レベルに負担を与えますが、自分自身でコントロールすることが可能です。

とはいえ、それでも特に強度の高い運動への準備を行う際には、体にストレスが余分にかかります。また大きな大会の前には、ストレスや不安も余計に高まります。

3. 不安/緊張:

これは、大事なイベントの前には誰でも経験する課題・チャレンジです。上手にコントロールすれば、不安や緊張をポジティブなエネルギーに変えることができま す。しかし、1型糖尿病を抱える人の場合、不安や緊張は血糖値を大きく乱す可能性があります。

今大会は、私がこれまで参加したレースのなかでも最も大きなもののひとつでした。競技そのものに対するストレスに加えて、標高と時差への対処で生じるストレス がありましたので、競技直前の数日間は、慎重に慎重を重ねて糖尿病を管理するようにしました。

 

4. 脱水:

これまでの3つのポイントが、脱水による影響をより悪化させます。1型糖尿病を抱える人が脱水を生じると、やはり血糖値のコントロールにストレスが生じます。

そのため、世界選手権のレースの後半35kmほどは給水に奮闘し、レースを完走することはできないと思うほど消耗しました。

以上の4つのポイントは、1型糖尿病を抱える私たちにとって、レースだけでなく日常生活において向き合わねばならない課題・チャレンジの一部でもあります。

したがって糖尿病とともに生きる私たちにとっては、何事もなく日々の生活を送れていることを自分たち自身で褒めてあげることが大切だと考えています。 

もっと我々自身でも周りの人からも定期的に励ましを受けるに値することだと思います。

私は世界選手権のスタートラインに立つだけでも、自身の体と心に立ちはだかるいくつもの山を克服しなければなりませんでした。

だからもし、チーム ノボ ノルディスクの選手がゴールする瞬間を目にしたときには、彼らがそのコースや競技だけではなく、生活の様々な面で出会う1型糖尿病の課題・チャレンジをも克服してきたのだということをどうか思い出してください。

2019年の世界選手権で私は、157人中156位の成績で完走しました。成績としては、私にとって生涯最低の結果のひとつとなりました!

それでも私は、この結果に大変満足しています!なぜなら、ゴールラインを超えるために、自分自身、完全に、まさにベストを尽くしたことを知っているからです。

私は本当に全てを出し尽くしました!レースを完走するために全てを捧げ、私のエネルギーを奪う4つの課題・チャレンジを抱えながら、それでもベストを尽くすことができたのです!

このことは、私たち皆が人生において何かを成し遂げたいときに求められることです。

私たちはたとえ課題・チャレンジを抱えていても、ベストを尽くすことができるのです。

ジャスティン モリス氏 略歴:

10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。

その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。

2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。

連絡先:

Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram: @justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com

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