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ペン・らいふ

糖尿病であることを伝えるメリット

No.3

東京女子医科大学 内科学講座
糖尿病・代謝内科学分野  高松 優斗

※ご所属・役職名は監修・取材当時のものです。

糖尿病であることを周囲に伝えていますか?様々な理由から、伝えていない方も少なくありません。糖尿病を伝えるメリットや伝える時のポイントを紹介します。

糖尿病であることを周囲に伝えるメリット

● 低血糖に対する対処に備えられる

1型糖尿病の方はもちろん、2型糖尿病でもインスリン療法をしている場合や、SU薬、グリニド薬などの血糖降下薬を使用している方は、低血糖を引き起こすリスクがあります。糖尿病であることを伝える最大のメリットは、低血糖を起こした時に、速やかに対応の協力が得られることです。低血糖と感じた時に、自分で補食やブドウ糖を摂ることができればよいのですが、できない場合や突然意識を失う可能性もあります。身近な人に低血糖の症状や対処法を伝えておくことで、低血糖への対処や医療機関への連絡が、速やかに適切に行われることが期待できます。周囲の方にとっても、そのような状況になった時に慌てずに対処できるのは、メリットと言えるでしょう。

● 糖尿病の治療に協力が得られる

血糖管理に重要な要素として食事療法と運動療法が挙げられますが、これを一人で続けることは大変だと感じる人がいるかもしれません。糖尿病であることを伝えることで、食事内容に家族が気を付けてくれたり、職場や友人が会食の際に考慮してくれることもあるでしょう。日々の生活を共にする周囲の人々の協力が得られ、糖尿病の自己管理がしやすい環境が作られるメリットがあります。

● 心理的・精神的負担が軽減する

糖尿病があると食事療法や運動療法などの自己管理が必要ですが、これらが精神的・心理的負担になっている方もいらっしゃいます。また、糖尿病に対する間違った認識や偏見なども、糖尿病のある方にとっては精神的・心理的な負担になる場合があります。様々な理由から、周囲に糖尿病であることを隠していること自体が負担になっていることもあります。糖尿病であることを周囲に伝え、糖尿病についての正しい情報を共有できれば、互いに理解が深まり、安心で安全な生活に繋がるでしょう。そして糖尿病のある方の精神的・心理的な負担が軽減され、その結果、良好な血糖管理に繋がることが期待できます。

周囲に伝える時のポイント

● サポートしてくれる人に伝える

糖尿病であることを「誰」に伝えるかは、とても大切な問題です。低血糖を起こした時などの安全面を考慮して、まずは家族や友人など、自分をサポートし、守ってくれる人に伝えることをお勧めします。また、学校の先生や職場の上司や同僚などに伝えておくと、病気の理解だけでなく、補食やインスリン注射などの環境を整えてもらえる可能性もあります。誰に伝えるか、しっかりと考えるようにしましょう。不安があれば、主治医に相談してみましょう。

糖尿病IDカードの携帯

糖尿病であることを伝えている人がいない状況で、低血糖などの体調不良が起きたり、不慮の事故や災害に巻き込まれたりすることもあるかもしれません。日本糖尿病協会発行の「糖尿病IDカード」があると、そんな時であっても、適切な診断や処置に繋がるため、カードの携帯をお勧めします。糖尿病IDカードに、使用中の薬、合併症、かかりつけの医療機関の情報などを記載し、身分証や保険証と一緒に持ち歩きましょう。カードの入手については主治医にご相談ください。

糖尿病であることを周囲に伝えることには、伝える方と伝えられる方の双方にメリットがあります。とは言え、様々な理由から、伝えることに躊躇することもあるでしょう。ご自分のおかれている環境や気持ちなどをよく考えた上で、誰に伝えるか、考えてみましょう。主治医や同じ糖尿病を持つ方の意見を聞いてみることも大切です。ひとりでも多くの方が周囲に伝えられる環境が整い、病気や治療への理解が深まる社会の構築が望まれています。

参考資料

JP25DI00132