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糖尿病NEWS解説

高血糖で脳が萎縮傾向認知症予防に新知見
金大グループ

No.1

近年、認知機能障害の治療や予防に対する関心が高まっています。糖尿病はアルツハイマー病の発症を約1.5倍増加させ、血管性認知症の発症を約2倍増加させることが明らかとなっており、それだけではなく、注意力の低下や計画を立てて実行する能力(遂行機能)の低下など、認知症の診断には至らない程度の認知機能障害もきたしやすいと言われています。

認知機能が正常な65歳以上の高齢者7千4百人を対象に、採血と頭部MRIを行い、糖尿病の指標と海馬(脳の記憶に関わる領域)の体積の関連を調べた研究の結果が、最近報告されました。血糖管理の指標であるヘモグロビンA1c(Hb A1c)やグリコアルブミン(GA) が高値であるほど、また、膵臓からのインスリン分泌能の指標であるHOMA-βが低値であるほど、海馬の体積が小さくなっていることが明らかになりました。そして、糖尿病がない人においてもGAが高値であることやHOMA-βが低値であることは、海馬の萎縮と関連していました。このことは、血糖管理の不良やインスリン分泌の低下が、認知機能の低下を引き起こす要因となる可能性を示唆しています。

糖尿病の早期発見と血糖値の良好な管理は、将来の認知機能障害を予防できる可能性があります。

参考

Shima A.et al.: NPJ Aging. 10(1):39, 1-10, 2024

東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科
山本唯

JP25CD00024