Go to the page content
3 min. read

グレート義太夫さん 【後編】

たけし軍団の一員として、お笑いタレントのみならずミュージシャン、舞台俳優としても活躍している義太夫さん。1995年に糖尿病と診断され、現在では糖尿病性腎症による腎不全のため、週15時間の透析治療を受けています。そのような状況でも前向きに病気と向き合っている義太夫さんから、メッセージをいただきました。

 (インタビューは2011年8月に行いました。)

糖尿病になってからの価値観

僕がたけし軍団に入ったとき、たけしさんに教えられたことが二つあります。一つは「男が自分で選んだ仕事なんだから、それは裏切っちゃダメだよ、一生懸命やらないと」ということ。もう一つは「お笑いはそのときの世の中とか世間が決めるわけなんだから、いつも俺が正しいとは限らないからね。ちゃんと自分でも勉強しなきゃダメだよ。ただ、せっかく俺のそばにいるんだから、俺の生き様だけはちゃんと見とけよ」ということ。

今、僕には相変わらず愛情たっぷりで見守ってくれる師匠 (たけしさん) がいるので、糖尿病や透析になっても落ち込まずに助かっています。師匠からの教えがあったからこそ、糖尿病になっても自分で選んだお笑いの仕事のために前向きになれているんだと思います。

病気になることで落ち込んだり、後ろ向きになるのって簡単だと思うんですよね。「どうせ俺は糖尿病だし」って思ってしまったらそこで終わりです。糖尿病や透析になってしまったものは仕方がないので、いかに病気に立ち向かっていくか、いかに病気を管理しながら自分の生活を送るのかは、自分次第だと思っています。
 

 

透析になっても前向きに考えようと思った

まだ糖尿病性腎症で通院していたときは、糖尿病を甘く見ていました。そのころには体からはっきりとしたサインが出ていました。極度の疲労感と吐き気、貧血、息切れ、全身の吹き出物。体から出るサインとして、もう尋常じゃないですよね。それでもそのときは「まだ大丈夫だろう、まだ大丈夫だろう」って思っていました。今となってはその頃の自分に「何を根拠にそう思ったんだ?」って聞いてみたいですね。

そしてとうとう2007年の8月、舞台が終わったあとに倒れてしまいました。

腎臓の機能を表す指標にクレアチニンというのがありますが、倒れる前に先生から「これが8 (mg/dL) を超えたら人工透析が必要だ」と言われていました。僕は糖尿病性腎症のとき、クレアチニンはずっと5 (mg/dL) だったんですけど、そのときに先生の指示を良く守らなかったので、これがどんどん上がっていきました。悪くなるスピードって、ものすごく速かったです。右肩上がりでね、ITの進化と一緒。

倒れたときに測ってもらったクレアチニンは11 (mg/dL) でした。このとき、「明日から入院してください、人工透析です」って言われました。昔と違って今はインターネットでいろいろ調べられるので、自分の身に何が起こったのか、透析とはどういうことかをそこで改めて知りました。今だから言えますが、そうなる前に先生の言うことをちゃんと聞いていれば、人工透析導入をもっと遅らせることができたと思います。先生の指示を守っていなかったのでこんなことになってしまったのは本当に反省しています。

僕の場合、1回5時間の透析を週3回受けています。合計で週15時間なので、「長時間拘束されて大変ですね」ということはよく言われます。でもこれは身から出た錆なので、透析とはちゃんと自分なりにうまく付き合っていかなきゃいけないと思っています。

確かに僕が透析を受けているあいだに他の皆はどんどん仕事したり、透析をすることで事務所に迷惑をかけたりしてしまっています。でもそこは考え方を変えて、透析の時間は仕事のネタや本を書くなど、自分でいろいろ考える時間にあてようと、前向きに考えるようにしています。
 

昔の自分へのメッセージ

昔の僕へ言いたいこと?ありますね。まずは「先生の言うこと、ちゃんと聞いたほうがいいぞ!」って。先生からは「これ以上病気が進むと、透析になってしまいますよ」って言われていたのに、何の根拠もなく「まだ大丈夫」って思ってへらへらしていました。失敗しました。あの時もう少しでも慌てていれば、もしかしたらまだ透析をしなくても済んでいたかもしれません。

透析まで進んでしまうと、自分ではどうにもできなくなってしまいます。糖尿病の治療だけだったら飲み薬もインスリンも自分で対処できるので、自分でできる治療法があるうちは、その時点で頑張って病気の進行を食い止めなければ!と思います。

初めて糖尿病と言われたときも、透析導入になったときも、「あのときにちゃんと治療しておけばよかった!」と、何年後かの自分がすごく後悔することになります。今はもう将来の自分が後悔しないように、治療にしても、仕事にしても、自分ができることを精一杯頑張ってやっていこうって思っています。

もし糖尿病で少しでも悩んでいる方がいたら、くよくよ悩まずにちょっとでも体を動かした方がいいですよ!体に「かつ」を入れるために、皆でちょっとずつ体を動かしましょう!
 

グレート義太夫さん プロフィール

1958年東京生まれ。1995年に糖尿病と診断される。2007年からは糖尿病性腎症による末期腎不全のため、透析治療を開始。現在でもお笑いタレント、ミュージシャンとして精力的に活動。著書『糖尿病だよ、おっ母さん!』では糖尿病の発症から透析に至るまでの経緯をエッセイ形式で綴っている。

※2011年取材当時の情報です。


※この記事は2011年に行った取材を基に作成しています。

糖尿病とともに生きるヒント

こんなページを見ています

 

JP23CD00115