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糖尿病とともに生きる-連載ブログ第3回:予測できないことをいかに乗り越えるか

こんにちは、1型糖尿病のオーストラリア人サイクリストのジャスティン・モリスです。今回で3回目となるブログです。またひと月経ち、先月よりも1型糖尿病と上手に暮らすことができているようになっていると願います。このブログでは、元プロサイクリストとして経験をしてきたことを紹介しています。

この1カ月、ほとんどの時間はマウンテンバイクレースに奮闘していました。しかし、今はレースをお休みして、アメリカのミシガン州北部にある親戚が営む果樹園で2週間過ごしています。この果樹園は、先祖代々6世代にわたり受け継がれてきましたが、残念なことに今の代で最後になってしまうかもしれません。

実際に農業を手伝ってみて、グローバル化された世界において農業で生計を立てていくことの難しさについて実感しました。

農業では、予測できないようなことが降りかかってきたり、無慈悲な状況に陥ることがあります。それは、母なる自然や天候による影響です。2年前のことですが、さくらんぼを6カ月もの間大事に苦労して育て上げたのにもかかわらず、ひょうを伴う突然の嵐が6分間にわたり襲い、収穫直前のさくらんぼが全滅してしまいました。そして、何十万ドルもの負債のみが残りました。このような予想外の出来事は、事前に対策を講じていない人たちを窮地に追い込んでしまいます。

優れた農家、有能なアスリート、そして糖尿病を上手に管理できる人には多くの共通点があると思います。サイクリングのコーチとして私は、生徒にはサイクリングを最大限に楽しむために、C.C.A - 自信 (Confidence) 、冷静 (Composure) 、そして予測 (Anticipation) の重要性を伝えています。この3つの特性は、優れた農家であるための重要な要素であると同時に、糖尿病管理の課題に立ち向かう際にも大きな助けとなります。

私と妻は4回飛行機を乗り継ぎ16ものタイムゾーンを超えて、このアメリカ中西部を訪れています。毎回この移動をするたびに、私の血糖値は予測できない状況に見舞われます。睡眠・覚醒リズムが普段とちがい不規則になり、血糖管理が難しくなります。さらに、アメリカ特有の果糖を多く含む食べ物と30時間に及ぶフライトで座ったままの状態も加わり、糖尿病への影響はさらに予測することが難しくなりました。

こんな時こそ、より良い血糖管理が得られるように、私の農家とアスリートとしての経験から得られたC.C.Aの考え方に立ち返るのです。今回、誤ったタイミングで食べ過ぎてしまい、少し眠ったかと思えば高血糖で40分ごとに目覚めてしまいました。その結果、時差ボケが回復するのに10日間もかかってしまいました。糖尿病をもたない妻は、3日間で完全に時差ボケから回復していましたので、その差は歴然です。

こんな時、私は糖尿病とともに生きることはとても不公平だと感じてしまいます。そして、糖尿病に拘束されているという気持ちになってしまうのです。

農場にいると、私が人生で直面している課題と、不公平な事態を対処する方法について気づきを与えてくれます。 農業では予測がつかない事がほとんどですが、農家の方がその予測不可能な状況に立ち向かってくれなければ、私たちは食卓で美味しいご飯をいただくことはできません。

サイクリングレースでも予測していないようなゲーム展開で、選手がそれに上手く対処して乗り越えなければ、さらに大きな不満となって募っていくだけです。

糖尿病は、まるでサーカスの危険な輪くぐりを飛び越えるように、先の見えないものだと思いますが、自信 (Confidence) 、冷静 (Composure) 、そして予測 (Anticipation) 、これらの3つの力をしっかりと心に留めておけばきっと乗り越えられると信じています。

現在、農業においても糖尿病においても、C.C.Aの「A」すなわち「予測」に関して、便利で高度なツールがあるので私たちはとてもラッキーだと思います。農業では、より精度の高い天気予報や、高い効果の得られる肥料、効率的なかんがい設備、そして数十年にわたって蓄積されたデータによって農業の生産性が向上しています。このような技術に目を付け、積極的に導入している農家は、成功を収めていることが多いです。

糖尿病管理をサポートする技術も日々進化しています。糖尿病のある私たちのための予測を助ける新しい機器や製剤は身近なものになっています。CGM、ポンプ、またそれらが連携した機器、そして優れた基礎インスリンなどは、すべて糖尿病のある方のニーズに応えるために開発されました。オーストラリアでは、このような新しい機器や製剤を利用できる機会がどんどん増えてきていているので、私はとても運がいいと感じています。しかし、このような恵まれた状況はまだまだ世界中には広まっていないのも事実です。

私は、農業を通じて予測できないことがあることを目の当たりにし、この世界においてコントロールできないことがあることを痛感しました。それでも、糖尿病とともに生きる中で、そうした状況を少しでも減らすことができるツールがあれば、私はそのツールを最大限に活用するべきだと思います。

私は以前、そうした新しい技術に頼りたくないという考えを持っていましたが、農業での経験が私の考え方を変えてくれました。特に糖尿病については、考え方が大きく変わりました。

次の週末、私は二つの湖に囲まれたミシガン州の湖岸を端から端まで横断する、345kmの自転車レースに出場します。予測できない糖尿病の大嵐によってレースの準備が妨げられないように、インスリンを調節して、血糖値管理のために革新的なテクノロジーを有効活用したいと思います。みなさんにレース結果を報告できるのを楽しみにしています。

レースの後、ノボ ノルディスクが主催するオーストラリアのイベントに出場するためにシドニーに戻ります。そして、1型糖尿病に対する認知を高めるためサイクリング イベント「Pedal for7」で、イギリスの北端から南端まで自転車で走行するという、とても魅力的な7日間を過ごす予定です。それではまた。

あなたの目標がどんなことであっても、背中を押してほしいときはロールモデルを探してください。必ず見つかるはずです!

ジャスティン モリス氏 略歴:

10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。

その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。

2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。

連絡先:

Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram: @justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com

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