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学びの窓

GLP-1受容体作動薬の現在

No.9

糖尿病の治療薬は様々あり、次々と新しい薬が生まれています。今回はGLP-1 受容体作動薬について、東京女子医科大学糖尿病センター内科 馬場園 哲也先生にご解説いただきます。

GLP-1受容体作動薬とは

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。食事療法と運動療法で血糖管理がうまくいかない場合に薬物療法を始めます。血糖値を下げる薬には色々な種類があり、患者さんの糖尿病の状態やライフスタイルによって使い分けます。現在多くの糖尿病薬が使用可能となりましたが、その一つに「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1:glucagon-like peptide-1)受容体作動薬」があります。

GLP-1は、食事を摂って血糖値が上がると小腸の細胞から分泌されるホルモンです。分泌されたGLP-1はすい臓のβ細胞上にあるGLP-1受容体と結合してインスリンの分泌を促し、血糖値を下げます。またGLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させることから、他の糖尿病薬と一緒に使用しない場合には低血糖が起きにくい特徴があります。この作用を活かすべく開発されたのがGLP-1受容体作動薬です。小腸から分泌されるGLP-1のかわりにGLP-1受容体作動薬がすい臓に作用しインスリンを分泌させ、その働きが持続するように創られた薬です。

GLP-1受容体作動薬の進歩

GLP-1受容体作動薬は飲んでも胃で分解されてしまい、血糖値を下げる効果を発揮できないことから、最初に注射薬が開発されました。その後、研究を重ね、お薬が胃の中で分解されず吸収を促す方法を発見したことで、飲み薬のGLP-1受容体作動薬が誕生しました。

飲み薬のGLP-1受容体作動薬は飲んだ後、体内で吸収されて血液中に入り、注射薬のGLP-1受容体作動薬と同じようにその作用を発揮することができます(図)。

様々なGLP-1 受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬の注射薬は、食事療法・運動療法をしても、また血糖降下薬を服用しても、血糖管理がうまくいかない2型糖尿尿のある方に検討されるお薬です。GLP-1受容体作動薬はすい臓のβ細胞からのインスリン分泌を増加させるお薬ですので、インスリン分泌が枯渇している方には効きません。

GLP-1受容体作動薬の注射薬は1日1~2回皮下注射する製剤と、週に1回皮下注射する製剤があります。また、GLP-1受容体作動薬と持効型溶解インスリンが配合された製剤もあり、この注射薬は1日1回の皮下注射です。

GLP-1受容体作動薬の飲み薬は注射薬と同じように作用しますので、やはりインスリン分泌が枯渇している方には効きません。GLP-1受容体作動薬の飲み薬は1日1回1錠を服用します。この薬は、1日のうちの最初の食事または飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL 以下)と一緒に服用し、服用後少なくとも30分は、飲食や他の薬剤の服用を避けることとされています(2021年9月現在)。薬剤師の説明通りに飲むようにしてください。また開始後、体調がいつもと違うなと感じた時は迷わず、主治医に連絡しましょう。

糖尿病の治療や薬物療法の研究開発は日進月歩です。今回はGLP-1受容体作動薬についてご紹介しましたが、他にも様々な薬があります。ご自分の病状やライフスタイルにあった薬や治療法を主治医と相談しながら、より良い血糖管理を目指しましょう。

馬場園 哲也(ばばぞの てつや)
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、小林浩子、佐伯忠賜朗、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

JP23DI00227