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糖尿病と血管

No.7

糖尿病と血管

 

糖尿病と血管の病気は密接な関係にあります。今回は糖尿病の慢性合併症のひとつである糖尿病大血管症について、東京女子医科大学糖尿病センター内科 三浦順之助先生が解説します。

 

2型糖尿病と動脈硬化の関係

多くの2型糖尿病は、インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性になりやすい素因のある方が、過食や運動不足などの生活習慣、肥満、ストレスなどが加わって発症します。糖尿病発症の前から、インスリン抵抗性の状態にありますが、インスリン分泌が亢進しているため、この時点では血糖の上昇はみられません。しかし、血管の内側にある細胞(内皮細胞)は少しずつ障害が起きています。これが動脈硬化の始まりです。高血糖や高血圧によって傷つけられた血管の内皮細胞に、血液中の単球(白血球の一種)が脂質代謝異常や高脂血症で増加したタンパクを取り込み沈着します。これらが蓄積し、肥厚することにより動脈硬化が進行します。糖尿病患者さんでは長期間にわたり、高血糖により血管が傷つけられることにより、動脈硬化が進行しやすい状態にあります。2型糖尿病の患者さんでは、糖尿病でない人と比べて、冠動脈疾患や脳卒中を発症する危険度が1.5~3.6倍高い1)と言われています。

 

多くの危険因子が関連する糖尿病大血管症

糖尿病の血管合併症は、細小血管障害である神経障害、網膜症および腎症が有名ですが、比較的頻度の高い血管障害として冠動脈疾患や脳血管障害、末梢動脈疾患にも注意が必要です。後者3 つの疾患をまとめて糖尿病大血管症と呼んでいます。動脈硬化の原因は、高血糖だけではありません。高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、肥満、喫煙などの危険因子も動脈硬化を進行させます。これらの危険因子が重なると糖尿病大血管症を発症する確率が高くなることが分かっています。虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の場合、高血糖、肥満、高血圧、高脂質血症などの危険因子が全くない方の発症の危険度を1とすると、重複する危険因子の数が増えるごとに発症する危険度は上がります。危険因子が3~4つ重なると、冠動脈心疾患を発症する危険度が30倍以上に増えると報告されています(図1)2)

 

危険因子の保有数と虚血性心疾患の発症の危険度

 

大血管症発症予防のための危険因子の管理

大血管症である冠動脈疾患の発作や脳卒中などは、生命に関わる重大な疾患です。予防のためにできることをご紹介しましょう。

●生活習慣の改善
食事療法と運動療法は、糖尿病の治療の基本であると同時に大血管症の発症の危険度を減らすことに繋がります。塩分を控える、栄養バランスの良い食事をする、日常生活の中で身体活動量を増やすことをお勧めします。肥満の解消も心血管イベントの危険因子を改善するために重要とされています。
生活習慣の中でも特に喫煙は、大血管障害との強い関係が明らかになっており、心血管イベント(脳卒中や心筋梗塞)と末梢動脈疾患の原因と言われています。大血管症発症の危険度を下げるために、禁煙(電子タバコを含む)に取り組みましょう。

●血糖のコントロール
2型糖尿病患者さんではHbA1cが1%低下すると、心筋梗塞の発症が14%低下するという報告があります3)。 1型糖尿病患者さんでも厳格な血糖コントロールにより心血管イベントが減少することが報告されています4、5)。糖尿病と診断された時から、しっかりと血糖コントロールすることが大血管症の予防に繋がります。

●血圧のコントロール
高血圧は脳卒中や心筋梗塞の危険因子であることが分っています。「高血圧治療ガイドライン2019」では、糖尿病患者さんの目標血圧は130/80mmHg 未満(家庭血圧125/75mmHg 未満)です。糖尿病患者さんでは、収縮期血圧が10mmHg低下することで脳卒中が27%減少することなども報告されていますが6、7)、急激な血圧の低下は、ふらつき、失神などの有害事象を引き起こすこともあるので、主治医と相談しながらゆっくり目標の血圧を目指しましょう。

●脂質のコントロール
脂質異常症も、糖尿病大血管症の危険因子です。脂質のコントロールは、大血管症の発症や再発予防に有用です。LDLコレステロールの目標値は心血管疾患の既往の有無や他の危険因子の有無により異なります。主治医から示された目標値を目指しましょう。運動や食事療法のみでは脂質異常症が改善せず、薬で治療中の方は、主治医の指示通りに薬を服用しましょう。

 

糖尿病患者さんでは、高血糖により血管が障害されるだけでなく、肥満や高血圧、脂質異常症などの併発により、動脈硬化がより進行することがあります。動脈硬化は、生命に関わるような重大な疾患を引き起こします。早い時期から血糖コントロールを良好に保ち、心血管障害の予防には、食事療法と運動療法、禁煙を基本に、血圧、脂質異常症などにも注意し、動脈硬化の進行を防ぐようにしましょう。

 

1)Haffner, SM et al. N Engl J Med 339: 229-234, 1998

2) Nakamura, T et al . Jpn Circ J 65 : 11–17, 2001

3) Stratton, IM et al. BMJ 321: 405-412, 2000

4) Kahler, P et al. BMJ Open 4: e004806, 2014

5) Fullerton, B et al. Cochrane Database Syst Rev 2:CD009122, 2014

6) Adler, AI et al. BMJ 321: 412-419, 2000

7) Emdin, CA et al. JAMA 313 : 603-615, 2015

 

 

三浦 順之助(みうら じゅんのすけ)
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、中神朋子、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

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