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学びの窓

血糖値と食事

No.14

血糖値と食事の関係について、食べる順番や速さなど、糖尿病のある方が食事をする上で血糖管理に役立つアドバイスをご紹介します。

はじめに

わが国における2型糖尿病の増加は、戦後の生活習慣の変化、特に食生活の欧米化が原因の一つと考えられます。糖尿病治療において、食生活の改善は血糖管理をよくするばかりでなく、脂質異常症や高血圧、肥満の是正にも大きく影響します。糖尿病の食事療法では、栄養素の量や摂取カロリーだけでなく、食事の摂り方も重要です。

食事の内容

食事に含まれる栄養素のうち、「炭水化物」だけでなく「たんぱく質」と「脂質」も血糖値に影響を与えます。炭水化物は食事開始後早期の段階から血糖値を上昇させ、2時間以内に血糖値に反映されます。たんぱく質は食後3~5時間、脂質は4~10時間で血糖値に反映されます。炭水化物は2 時間以内に全て消化、吸収される一方で、脂質は消化、吸収に時間がかかるため、長時間にわたり血糖値に影響があります。炭水化物の摂取量を減らせば血糖値が下がると思われがちです。これまで、炭水化物の摂取量と血糖値の関係に関する研究は多く発表されています。低炭水化物食により体重や血糖値が低下したとする結果は、炭水化物を減らした効果というよりも、総エネルギー摂取量が減ったことによると考えられています。炭水化物摂取量と血糖管理や合併症との関係は一致した見解がありません。炭水化物を極端に減らすことは、長期的な安全性などが証明されていません。また、食事の主食を減らすとかえっておかず量が過剰になったり、小腹が空いて間食が増えてしまうことに繋がりかねません。主食を食物繊維の多い玄米や雑穀米、全粒粉パンなどを選ぶと、食後の血糖値が上昇しにくくなります。

果物に含まれる果糖は、食後血糖の上昇がゆるやかですが、過剰摂取は血糖のみならず、中性脂肪や体重の増加を来たす心配があります。「糖尿病食事療法のための食品交換表*」では果物は1日80kcal までとされ、みかん中2 個、リンゴ中1/2個などの目安が写真で掲載されているので参考にされるとよいでしょう。

食事の摂り方

1.食べる順番
食物繊維を多く含む野菜やたんぱく質を米飯より先に食べると、食後の血糖値が抑えられることが報告されています。野菜に含まれる食物繊維が糖質の分解、吸収を遅らせることにより、食後血糖の上昇を抑えると考えられています。たんぱく質は先に食べることで、消化管ホルモンであるインクレチンの分泌が増えて、胃の運動が抑えられることで、食後の血糖値を抑えることが報告されています。

2.食べる速さ
2型糖尿病では、食後のインスリン分泌の遅れや低下があるため、早食いではインスリン分泌が間に合わず、食後血糖が急上昇します。食事をして血糖値が上昇すると、脳の満腹中枢が刺激され満腹であることを体に伝えます。満腹中枢が血糖上昇を感知するまでに、約15分かかると言われており、早食いでは満腹を感じる前に食べ進めてしまい、過食に繋がります。根菜類やきのこ、こんにゃく、海藻類など食物繊維が豊富で歯ごたえのあるものを積極的に取り入れましょう。

3.食べる時刻
食事の回数は1日3回を基本とし、欠食しないことが重要です。朝食を抜くと、その後のインスリンの作用が低下することによって、昼食後および夕食後の血糖値が上昇することがわかっています。絶食の時間が長いことが、遊離脂肪酸を上昇させたり、消化管ホルモンの分泌が刺激されないことにより、インスリン分泌の反応を低下させるためです。
また、遅い時間帯の夕食は、肥満や血糖管理がうまくいかなくなる原因となり、合併症を来たすリスクが高くなることがわかっています。夕食が遅いと、空腹のために食事量が増えてしまうこともあります。早めの時間に少量食事をとり(サラダとおにぎり、野菜サンドイッチなど)、帰宅後の食事も軽めにするといった分食は一つの方法です。

アルコール

アルコール摂取と血糖管理はUカーブ現象を示すことがわかっています。日本人では25g/日まで(ビール500mL、日本酒1合程度)が適当と考えられています。ただし、アルコール量だけでなく、アルコール飲料に含まれる炭水化物のエネルギーに注意が必要です。また、アルコールは急性効果として低血糖を来たすため、インスリン治療中の方は注意しましょう。

食事療法は生涯にわたって継続して続けていかなければなりません。それぞれの生活パターンや食事の好みに合わせつつ、上手にコントロールしていきましょう。

*糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版. 日本糖尿病学会編著, 文光堂, 2013.

大屋 純子(おおや じゅんこ)
東京女子医科大学糖尿病・代謝内科

監修 [ごあいさつ]
東京女子医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科学
教授・基幹分野長
馬場園哲也

編集協力
大屋純子、小林浩子、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

JP23DI00182