Go to the page content
3 min. read
3 min. read

学びの窓

糖尿病と患者会

No.11

全国の病院や診療所には、糖尿病のある方のための患者会があります。糖尿病のことをもっと良く知り、より良い治療や医療に繋げるための患者会について、その役割や患者会の活動などをご紹介します。

患者会とは

患者会とは、同じ病気や障害など、共通する患者体験を持つ人達の集まりです。お互いの悩みや不安を分かち合い、情報を交換することにより、患者同士の支え合いの場となります。また、患者会によっては、患者さんや家族のために様々なプログラムを実施したり、社会に対して働きかけを行う団体もあります。がんや難病など様々な病気の患者会がありますが、糖尿病のある方のための患者会もあります。

糖尿病の治療は、食事療法や運動療法など生活そのものが治療の中心となります。糖尿病のある方自らが生活習慣を改善し、健康的な生活習慣を継続する必要があります。しかし、長い治療生活の中では社会的、経済的な問題を抱えたり、セルフケアがうまくいかず、悩んでいる方も多いと思います。そのような状況で、患者会による同じ病をある方同士の繋がりは大変に貴重なものとなります。

糖尿病患者会の役割

① 仲間同士の支え合い
医療者や専門家からの治療支援だけで、実際に治療を続ける生活を送ることには限界があります。やる気はあるものの、仕事や家庭内などに問題がありなかなか実行に移せない、それを誰に相談したらいいのかわからない、など一人で悩みを抱えている場合もあるでしょう。そのような時、ほかの方の話を聞くと、悩んでいるのは自分だけではなかった、と安心感が得られ、仲間同士の連帯感が生まれます。

また、自分の問題や体験を伝えることによって、自分自身の病気への思いを整理することができます。さらには、自分の体験がほかの誰かの支えになることを知り、自分自身への自信を取り戻すこともあるでしょう。

② 情報の入手
治療を続ける日々がうまくいかない原因のひとつに、糖尿病に対する知識の不足や間違った理解があります。患者会では、同じ病のある方同士で話すことによって、ほかの人が日常生活でどのような工夫を行っているか、などを知ることができ、自分自身の問題を解決する糸口を見つけられることがあります。

また、講習会や専門家によるセミナー、広報誌などによって情報を得ることができます。さらに、患者会のメンバーが自ら広報誌を作成することによって、知識をより深めることができます。

わが国の糖尿病患者会

わが国における糖尿病患者会は、その大部分が病院や診療所単位で結成され、日本糖尿病協会1)に加盟しています。日本糖尿病協会は、糖尿病を克服し国民の健康の増進に寄与することを目的に、1961年に設立され、全国に約1,600の糖尿病「友の会」と47の都道府県糖尿病協会があります。

糖尿病「友の会」は、糖尿病のある方とその家族へ、より充実した生活を送ってほしい、病気に負けないで頑張ってほしいという願いから作られた、医師や看護師、栄養士、そして糖尿病のある方でつくったサークルです。活動内容は、各々の会によって異なっていますが、勉強会、食事療法に基づく料理教室・食事会、糖尿病のある方同士の情報交換会(茶話会)、歩く会、小旅行などがあります。日本糖尿病協会本部や都道府県糖尿病協会が行う行事に参加でき、日本糖尿病協会が発行する糖尿病の専門誌「月刊糖尿病ライフさかえ」を購読することができます。

友の会を作るには、糖尿病のある方や家族、医療スタッフを含めて5人以上の会員を集め、会の名称、会長、指導医療スタッフを決め、日本糖尿病協会と最寄りの都道府県糖尿病協会に申し込みます。

1型糖尿病のある方のための患者会も存在します2)。わが国の糖尿病患者の9割以上は2型糖尿病であり、1型糖尿病は少数です。また、小児期に発症することが多く、2型糖尿病のある方とは違った問題や悩みを抱えることがあります。少数であるため、医療施設単位での患者会を立ち上げることは難しく、複数の病院の横断的な患者会もあります。

患者会の入会

患者会は書籍、雑誌、インターネットなどで探すことができます。患者会の基本的な情報として代表者、会員数、会費、主な活動内容、活動地域などを確認してください。自分自身が通院している病院や診療所に患者会がある場合は、スタッフに話を聞いたり、実際に参加したりしてして雰囲気を確認しましょう。

患者会で、ある特定の医療機関への受診や特定の治療方法を勧めるなどの怪しい行為が見られた場合は、入会を断り、主治医にご相談ください。

コロナ禍の患者会

ここ2年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのため、我々の生活は一変しました。糖尿病の治療を続ける生活にも様々な影響がありましたが、患者会の活動も大きな影響を受けました。糖尿病のある方同士の集まりが開けない、勉強会やセミナーなどが開催できない事態に陥っています。コロナ禍での密を避けるため、患者会によってはウェブによる講演会や談話会を開催しているところもあります。ウェブで開催することにより、今まで参加できなかった人達が自宅や出先から参加できるようになるという良い一面がある一方で、インターネットやパソコンの操作に不慣れな人達は参加が難しいという問題もあります。今後も各々の患者会でウィズコロナに対応した様々な工夫が検討されていくと思います。

我々はこのコロナ禍で人への思いやりや信頼、正しい情報の大切さを痛感しました。患者会を通して、コロナで分断された同じ病のある方同士の繋がりが再構築されることが望まれます。

 

1) 公益財団法人日本糖尿病協会
   https://www.nittokyo.or.jp/modules/about/index.php?content_id=3

2) 認定特定非営利活動法人日本IDDM ネットワーク
   https://japan-iddm.net/

柳沢 慶香(やなぎさわけいこ)
東京女子医科大学糖尿病・代謝内科

監修 [ごあいさつ]
東京女子医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科学
教授・基幹分野長
馬場園哲也

編集協力
大屋純子、小林浩子、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

JP23DI00227