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小児1型糖尿病のインスリン療法

No.8

 

小児1型糖尿病患者さんのインスリン療法には、ご本人のみならず、ご家族や周囲の協力も非常に大切となります。小児ならではのインスリン療法や、生活上の注意点について解説します。

 

小児期の1型糖尿病患者さんの特徴

1型糖尿病は膵臓のβ細胞が壊れて、インスリン分泌が過度に不足して起こる病気であり、小児の1型糖尿病の病態は大人と基本的には変わりません。治療中の典型的な症状としては、口渇、多飲、多尿、体重減少、機嫌が悪い、元気がないなどがあります。

 

小児期の治療目標

小児期の1型糖尿病患者さんの治療の目的は、糖尿病でない子どもたちと同じように成長・発達し、日常生活を楽しむことができるようにすることです。HbA1cの高値が続くと、将来成人になってから合併症が発症、進行しやすくなることを念頭に置き、血糖コントロールを行います。目標HbA1cは7.5%未満ですが、大人と同様、個々の生活や病態に合わせ、低血糖が起こらないように設定します。また、成長期のため、インスリン必要量が著しく変化し、血糖値も大きく変動する時期がありますが、あまり神経質になりすぎないことが大切です。患児の生活、心の発達などを考慮した糖尿病の治療と心のケアが大切です。

 

学校生活について

糖尿病があっても、学校行事に制限はありません。運動系のクラブ活動、運動会、遠足、修学旅行なども可能です。ただし、低血糖への対策、補食の持参、血糖自己測定、注射時間の確保など、学校側にサポート体制や環境を整えていただく必要があります。また、患児の成長や、糖尿病であることを周囲のどの程度の範囲の友達に知らせているかなどにより、サポート体制も変わります。ご家族とご本人、そして学校側と十分に話し合い、情報交換をしておくことが重要です。

 

低血糖の予防と血糖自己測定

小児期の治療も、強化インスリン療法(各食前の追加インスリンと1日1~2回の基礎インスリン注射)が基本ですが、特に昼食前のインスリンを学校で本人が自己注射できるかどうかが大切になります。通学先の環境なども考慮して、本人にとって無理のない治療方法を選択します。

成長期はエネルギー消費が多く、特に体育の授業や運動系の部活動をしている場合には、低血糖を起こすことがあります。血糖自己測定ができれば、補食が必要かどうか判断することができますし、最近では皮膚に留置したセンサに携帯型のリーダーをかざすだけの、手軽な間歇的グルコースモニタリングシステムを使う患児も増えています。低血糖を起こす可能性がある時には、「予防的に」何か食べておくことも大切です。

 

家の外での間食

成長に伴い、子どもは家の外での活動が増えます。友人宅でおやつを出していただいたり、学校帰りに友人と間食をすることもあるでしょう。友人やそのご家族が1型糖尿病であることを知っている場合は、血糖値を測ったり、必要に応じてインスリン注射をすることも気軽にできると思います。家の外で血糖測定やインスリン注射ができない場合は、帰宅後に血糖値を測り、必要に応じてインスリン注射をすることが大切になります。

いつ何をどのぐらい食べたかなど、家族内でもコミュニケーションをしっかりととり、より良い血糖値を維持するため、患児のサポートを続けていくことが大切です。

 

ご家族の方へ

小学生低学年の頃は、ご家族が患児にインスリン注射や血糖自己測定を行ったり、その過程の大部分をサポートしていることが多いと思いますが、血糖値の変動に神経質になりがちです。また、成長に伴い、患児が自分で血糖測定やインスリン量の調節などができるようになっても、ご家族の心配の方が高じてしまうこともあります。ご家族は血糖値の変動に一喜一憂しないよう患児に働きかけ、ストレスを感じないように心がけていただくと良いと思います。

また、思春期では心も体も不安定な時期のため、血糖コントロールが悪化することもしばしば見受けられます。あまり神経質にならずに、状況を見守りながら、家族一緒に不安定な時期を乗り越えることが、将来の合併症予防に繋がります。ご家族の方には、お子さんの成長の一過程として、広い心と長い目で見守っていただければと思います。

 

 

 

小児1型糖尿病のインスリン療法
小児1型糖尿病のインスリン療法

参考:
・日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021, 9 ライフステージごとの糖尿病: 99, 文光堂, 2020
・日本糖尿病学会、日本小児内分泌学会編・著:小児・思春期1 型糖尿病の診療ガイド, 南江堂, 2017

 

 

保科 早里
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、中神朋子、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

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