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ぺん・くらぶ

持続皮下インスリン注入療法

No.2

ポンプを使用してインスリンを持続的に補う「持続皮下インスリン注入療法(CSII)」について、その利点と注意すべき点について解説します。

持続皮下インスリン注入療法とは

持続皮下インスリン注入療法(CSII)は、小型のポンプにより持続的にインスリンを皮下注入して血糖管理を行う治療法です。このポンプをインスリンポンプと言い、皮下に留置したカニューレという細い管を通して自動的にインスリンが注入されます。インスリンポンプでは、(超)速効型インスリンを基礎インスリンとして24時間持続的に注入するとともに、食事に合わせて単位調節しながら追加インスリンをボタン操作で注入することができます(図)。

インスリンポンプ療法のよい適応

1. 高血糖と低血糖を繰り返すなど、血糖管理が不安定な場合
2. 暁(あかつき)現象[後述]が顕著な場合
3. 無自覚低血糖が頻回に起こる場合
4. ライフスタイルに変化が多い(シフトワーク、出張が多いなど)場合
5. 妊娠中もしくは妊娠前血糖管理
6. 小児(食べムラがある)の場合
7. 必要インスリン量が少ない場合(20U/日以下など)
8. 経管栄養など一定の速度で糖分が注入されている場合

また、1日中カニューレを皮膚に装着し、ポンプ本体を帯同することに抵抗感が少なく、機器の操作ができる方が対象となります。

CSIIの利点

生活に合わせて基礎インスリン量を時間で調節できる
基礎インスリンの必要量は、1日のうちでも時間により変動しています。特に明け方に血糖値上昇する暁現象に基礎インスリンを合わせることは、通常の頻回注射法では難しいのが現状です。しかし、インスリンポンプでは、あらかじめ必要なインスリン量や注入速度を時間により設定できるので、明け方の血糖値上昇も抑えることができます。また、糖尿病のある方の血糖管理の状態や、ライフスタイルに合わせて、注入するインスリン量や速度を細かく設定できるので、良好な血糖管理が可能となります。

追加インスリン量が細かく調節でき、食事に合わせて注入方法も選択できる
食事の量や内容に合わせて、追加インスリン量や注入速度を調節できます。すぐに血糖値が上がらない食事にも対応可能です。また、ボタン一つで一定量のインスリン注入が可能です。

針を刺す回数が減る
ペン型注入器によるインスリン注射では、1日数回針を皮下に刺しますが、CSIIでは留置するカニューレの交換は、2~3日に1度となります。

CSIIの注意点

カニューレの装着
装着部位の違和感や感染のリスク、装着部が外れたりカニューレの先端が抜けたりすることがあります。またカニューレ穿刺時に出血することもあります。

チューブのトラブル
ポンプから皮膚のカニューレまではプラスティックのチューブでつながっていますので、このチューブをひっかけたり、絡まったり、閉塞してしまうこともあります。

器機のトラブル
インスリンポンプは器機ですので、不調でうまく動かなることも考えられます。多くのトラブルは、アラートが出て使用者に知らせることになっていますので、ポンプの調子の悪い時はアラートの内容を見て対応するか、よくわからない場合はメーカーのコールセンターなどに相談する必要があります。トラブルに備えて、ペン型のインスリン注入器は必ず携帯するようにします。

インスリンポンプと持続糖濃度測定機能を組み合わせたSAP療法

近年、連続的に皮下組織の間質液中の糖濃度を測定する持続糖濃度測定(CGMS)が可能となりました。間質液中の糖濃度は、10-15分程度血糖値よりも遅く動きます。しかし、血糖値と連動するため血糖値の変動をとらえることができます。たとえば、夜間帯や日中の仕事や勉強中など、血糖自己測定ができない時間帯の血糖値の変動をリア管理ルタイムに、あるいは後から知ることが可能です。このCGMを搭載したインスリンポンプ(SAP)療法では、高血糖や低血糖を知らせる機能も付いているため、血糖日内変動に合わせたリアルタイムの対応や、低血糖の予防などきめ細かい血糖管理が可能です。


最近では、インスリンポンプ本体を皮膚に装着し、リモコンでポンプを操作する送液チューブのない新しいパッチ式インスリンポンプも使用できるようになりました。

多くの種類のインスリンや、様々なデバイスの使用が可能となり、ライフスタイルや使用者の望に合わせた血糖管理を実現できる時代となりました。それぞれの治療法のメリット、デメリットをよく知った上で、お一人ずつに合ったインスリン療法を実現してほしいと思います。

三浦順之助
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、中神朋子、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

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