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ぺん・くらぶ

インスリンと体重増加

No.16

インスリン療法によって体重が増える方がいますが、なぜ体重が増えるのでしょうか。インスリン療法によって、体重が増える理由や体重増加による影響、体重増加を防ぐ方法について解説します。

インスリン療法で体重が増加する理由

インスリン療法を行うと、長期的に体重増加のリスクがあるといわれていますが、その理由として次のことが考えられます。

●インスリンの作用
インスリン療法は、糖尿病のある方にインスリン不足を補うので、それまで利用できなかった糖を筋肉や脂肪の細胞、肝臓に取り込めるようになり、血糖値が下がります。同時に、インスリンには骨格筋や脂肪細胞、肝臓において、たんぱく質や脂肪の合成を促したり、脂肪の分解を抑えたりする作用があるため、インスリン療法を行うと体重が増える可能性があります。

●十分ではない食事療法・運動療法
インスリン療法を行うと血糖値が下がるため、油断して食事療法や運動療法を怠りがちになる方がいます。過食や運動不足は、体重増加に繋がります。

●過剰な補食
インスリン療法では、低血糖を引き起こすことがあります。低血糖を予防したり、低血糖が起こった場合には補食を行いますが、必要以上に補食をすると、エネルギー摂取が過剰になり、体重増加の原因になることがあります。

インスリン療法中の体重増加の影響

インスリン療法中に体重が増えると、それまでのインスリン量では効果が不足し、血糖値の管理がうまくできなくなります。そのような場合には、インスリン量を増やす必要があります。しかし、インスリン量を増やしても、食事療法や運動療法をまた怠ってしまうと、さらなる体重増加に繋がり、悪循環がもたらされます。また、インスリンによる低血糖のリスクも大きくなり、血糖値の管理も難しくなることがあります。

インスリン療法中の体重増加を防ぐには

インスリン療法で、必ずしも体重が増えるわけではありません。体重増加を防ぐ方法を紹介します。

●食事療法、運動療法を継続する
インスリン療法中も、糖尿病の治療の原則である食事療法と運動療法は続けることで、体重増加を防ぐことが可能です。インスリン療法で血糖値が下がっても、油断せずに食事に気を付け、定期的な運動を続けましょう。

●適切なインスリン量と補食で低血糖を予防する
インスリン療法では、低血糖を起こすことがありますが、それを回避するために、必要以上に補食をしてしまうと体重増加に繋がります。生活のリズムや運動量に合わせた、適切な補食の方法や量を知ることが大切です。また、頻回に低血糖を繰り返すと低血糖の症状を自覚しにくくなり(無自覚性低血糖)、急に倒れることもあります。主治医と相談しながら、適切なインスリン量による治療を行いましょう。

インスリン療法を続けていて、体重増加が気になっている方は、一度、その原因を主治医や医療スタッフと一緒に考えてみましょう。毎日の生活や補食を見直すことにより、体重の改善だけでなく、血糖値の改善に繋がることも少なくありません。気になることがあれば、ぜひ主治医に相談してみてください。

参考
日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2019   6 インスリンによる治療. 93-105, 2019 南江堂

中神 朋子
東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科

監修 [ごあいさつ]
東京女子医科大学内科学講座糖尿病・代謝内科学
教授・基幹分野長
馬場園哲也

編集協力
大屋純子、小林浩子、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

JP25CD00029