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介護が必要な方への注射療法

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糖尿病患者さんでは、加齢や合併症の進行などに伴って、日常生活動作(activities of daily living、 ADL)が低下し、介護が必要となることがあります。介護が必要な方への注射療法の注意点をご紹介します。

 

高齢社会における介護への備え

日本は高齢社会を迎え、高齢糖尿病患者さんが増えています。国内外の研究から、高齢糖尿病患者さんは、糖尿病ではない高齢の方に比べると、身体機能や認知機能の低下に伴ってADLが低下しやすく、介護を必要とすることが多いことが報告されています。介護が必要となった場合、患者さんご本人のみならず、介護を行う方も、インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬などの注射療法、そして治療中の低血糖やシックデイへの対処法を理解することが大切です。

 

患者さんに代わって注射療法を行える方

我が国では、患者さんご自身による自己注射や血糖自己測定が難しい場合、患者さんのご家族が、医師や看護師の指導の下で手技を習得した後、患者さんに代わって注射や血糖測定を行うことができます。また、65歳以上の糖尿病患者さん、および40~64歳であっても医療保険に加入されており糖尿病性神経障害、糖尿病腎症および糖尿病性網膜症が原因で支援や介助が必要になった患者さんは、介護保険による訪問看護を利用することができます1)

自治体の福祉課あるいは地域包括支援センターを窓口として、必要な書類(主治医による介護保険主治医意見書や訪問看護指示書など)をもとに、訪問看護師による自己注射や血糖自己測定の実施や確認などの支援を受けることが可能です。

ただし、患者さんの要支援・要介護度によって訪問看護の利用時間や頻度が異なるので、決まった時間に注射療法の支援を受けることが難しいケースもあります。なお、入所施設で糖尿病治療を継続する場合は、現在、介護職員によるインスリン注射が許可されていないことに留意して、適切な注射療法が継続できるか、事前に確認しておくことが大切です。

 

ADLの低下に気付いたら

糖尿病治療中に、転倒や物忘れなどADLの低下を自覚する出来事があった場合は、まず主治医の先生に相談してください。ADLの低下に伴って注射療法を続けることが難しく感じられる場合でも、インスリン注射を止めると高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスなどを起こすこともありますので、自己判断でのインスリン注射の中断は禁物です。

患者さんの状態をみて、主治医の判断により、注射薬から飲み薬に変更することが可能なケースもあります。また、インスリン療法では1日1回の持効型製剤を使うことで、簡便に治療することが可能になってきました。GLP-1受容体作動薬は、1 日1 回もしくは2回あるいは1週間に1回の製剤もあるので、患者さんの状態に適した製剤に切り替えることも可能かもしれません。主治医と良く相談して、患者さんに合う治療法を見出しましょう。

 

ADLに沿った糖尿病治療の時代へ

日本糖尿病学会は日本老年医学会と合同で、患者さんのADLに沿った糖尿病治療、血糖コントロールを提言しており、2021年の『高齢者糖尿病治療ガイド』2)の改訂でもその方針が引き継がれました。このガイドは、糖尿病患者さんが、その生涯を通して適切な治療を受けられるよう作成されています。患者さん一人ひとりのADLや社会的背景を考慮したオーダーメイドの治療・ケアがますます求められる時代になったと言えるでしょう。

 

 

 

ADLに沿った糖尿病治療の時代へ

1)厚生労働省:介護保険制度について(40歳になられた方へ)
   https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf
2)日本糖尿病学会・日本老年医学会編・著:高齢者糖尿病治療ガイド2021. 文光堂

 

 

石澤 香野
東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、小林浩子、佐伯忠賜朗、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

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