糖尿病NEWS解説
以前は「高齢になると認知症になるのは仕方がない」と考えられていましたが、社会の高齢化に伴い、大きな問題となってきました。特にアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)の患者さんが増加しており、糖尿病患者さんが増えてきたことと関係していることがわかってきました。
日本が世界に誇る疫学調査に、久山町研究があります。福岡に隣接する人口約8400人の久山町。1961年以来、九州大学医学部久山町研究チームが全住民の健康状態、疾病状態を調査している壮大な研究です。この町は、日本の人口動態(住んでいる人の年齢や職業など)が全国平均と似ているため、この調査の結果を日本全体の結果とみなすことができ、注目されています。
最新の久山町研究から、アルツハイマー病患者さんの脳の海馬(記憶を司る部分)で、複数の遺伝子の働きに異常が発見されました。その中にはインスリンと関連する遺伝子も複数含まれていました。アルツハイマー病では、これらの遺伝子の働きが低下しているために糖を十分に利用できず、様々なストレスに弱くなります。この状態で糖尿病を発症すると、アルツハイマー病が進行するのではないかと研究者らは述べています。
インスリンの効き目をよくし、糖尿病を予防する最も簡単な方法は運動です。久山町研究でも、運動や、和食と乳製品を中心とした食事が、糖尿病だけでなく認知症のリスクを減らすことがわかっています。
東京女子医科大学 東医療センター 病院長
内潟 安子
監修 内潟 安子 [創刊によせて
]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長
編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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