糖尿病NEWS解説
糖尿病白内障に新たな一手を
No.20
白内障の発症を抑える物質を発見
白内障は、さまざまな原因で水晶体が濁る眼の病気で、進行すると視力低下を引き起こします(詳しくは主治医に)。糖尿病があると白内障の発症時期が早くなる傾向がわかっています。現在、治療法は手術で濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入するのが一般的です。
福井大学の研究チームは、「エピジェネティクス」に着目して糖尿病白内障の研究を進めました。エピジェネティクスとは、細胞の遺伝子情報を伝えるDNAは正常なものの、DNAが巻き付いているタンパク質の変化によって、正常とは異なる遺伝子情報が現れることを言います。最近では、生活習慣病などの発症とエピジェネティクスの関連が明らかになり、注目されています。
研究チームは、糖尿病白内障を引き起こしたラットに、エピジェネティクスを妨げると予想される物質を投与し、その効果を検討しました。投与した26種類の物質のうち10種類が水晶体の白濁の進行を抑えました。今後は白内障の進行を予防する点眼薬の創薬に向け、有効性や安全性の研究が進められるそうです。これらの物質はまだ明らかにされてはいませんが、もし点眼薬が実用化されると、白内障の発症・進行を予防し、医療経済への貢献といった点でも、大きな成果が期待されます。
東京女子医科大学 糖尿病センター
三浦 順之助
監修 内潟 安子 [創刊によせて
]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長
編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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