糖尿病と骨粗しょう症はどのような関係があるのですか
No.16

糖尿病のある方の骨折リスク
骨粗しょう症は、骨の強度が低下して、骨折のリスクが高まる病気です。発症の原因には、加齢や女性ホルモンの減少が関わっています。高齢になると骨粗しょう症による骨折リスクが高くなりますが、糖尿病があるとさらにそのリスクが高くなることが分かっています。特に脚の付け根(大腿骨近位部)の骨折リスクは、糖尿病でない方と比べて1型糖尿病は約3~7倍、2型糖尿病は1.3~2.8倍高くなるといわれています1)。
糖尿病で骨折リスクが高くなる理由
糖尿病があると、高血糖や骨に対する酸化ストレス*
により強い骨が作られにくくなったり、インスリンの作用不足が骨を作る機能を低下させたりするなど、骨に対して様々な影響をおよぼし、骨折リスクが高くなると考えられています。
* 酸化ストレス:体の中でエネルギーが作られる過程できる活性酸素が、骨の形成を抑え骨の細胞死を誘導する。
まずは血糖値の管理
糖尿病があっても、血糖値の管理が良好な方では、骨折リスクが低いことが分かっています1)。血糖値の管理は糖尿病の悪化や3大合併症だけでなく、骨粗しょう症の予防にも役立っています。一方、低血糖による転倒は骨折に繋がることもあるので、低血糖にも注意しましょう。
骨粗しょう症による骨折を予防するには
●食事のポイント
バランスのよい食事とカルシウムを摂るようにしましょう。カルシウムの吸収をよくするビタミンD、ビタミンKを含む食品も一緒に摂ることも大切です。スナック菓子、アルコールやカフェインを含む飲料は摂り過ぎないように気を付け、喫煙者では禁煙することも骨粗しょう症予防に繋がります。
●運動のポイント
ウォーキングなどの有酸素運動を1日10~20分程度に加え、可能な限りスクワットなどのレジスタンス運動を組み合わせましょう。また、少し負荷のかかる運動として、階段の昇り降りを日常生活の中に取り入れることもお勧めです。骨の健康には、日光も大切なので、屋外での運動も取り入れましょう。
●骨粗しょう症を治療中の方
骨粗しょう症の予防や治療には飲み薬や注射などがありますが、定期的に受診して、治療を続けていくことが大切です。
骨の健康が心配な方は主治医や医療スタッフに相談してみてください。
1) 竹内靖博:医学の歩み276(5) 499-504, 2021
望月 翔太
東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科
監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也
編集協力
北野滋彦、小林浩子、佐伯忠賜朗、中神朋子、花井豪、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順
JP25CD00029