糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
インスリン治療まで、関連する内容が満載!サイト内検索

 

糖尿病と感染症

No.8

糖尿病と感染症

 

新型コロナウイルス感染症の流行により、改めて糖尿病と感染症の関連が注目されています。糖尿病と感染症について東京女子医科大学糖尿病センター 井倉 和紀先生が解説します。

 

糖尿病と感染症の関係

糖尿病患者さんは、様々な感染症にかかりやすいだけでなく、感染した場合は重症化しやすいと言われています。その理由は、血糖値が高くなると免疫の機能が低下するからです。免疫は細菌やウイルスなどから体を守る防御機構です。糖尿病で高血糖が続くと、免疫に関わる白血球や細胞の働きが悪くなり、病原体と戦えない状態になることがあります。

また糖尿病によって引き起こされる血流障害や神経障害などの合併症が、感染症の発症や重症化に影響します。たとえば、糖尿病性神経障害があると神経因性膀胱(神経経路の障害により、排尿のコントロールが上手くいかなくなる状態)から尿路感染症にかかりやすくなります。末梢神経障害による足の感覚低下があると、気が付かないうちに傷ができて皮膚の感染症(足潰瘍、壊疽)を発症していることがあります。糖尿病患者さんは皮膚が乾燥しやすく、痒みによる引っ掻き傷からも感染することがあるので注意が必要です。

 

糖尿病患者さんがかかりやすい感染症

糖尿病患者さんでよくみられる感染症として、肺炎などの呼吸器感染症、膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症、皮膚の感染症、歯周病などが挙げられます。また体のまれな部位に感染症を引き起こす場合があり、悪性外耳道炎、気腫性膀胱炎、気腫性腎盂腎炎、気腫性胆嚢炎、内臓あるいは軟部組織の膿瘍、鼻脳ムコール症、壊死性筋膜炎、フルニエ壊疽(陰部の感染症)などが糖尿病患者さんに合併しやすい特有の感染症になります。

 

新型コロナウイルス感染症と糖尿病

未知のウイルスのニュースが飛び込んできてから1年以上が経ち、糖尿病患者さんに対する新型コロナウイルスの影響が少しずつわかってきました。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.1版」によると、感染して重症化するリスクが高い基礎疾患のひとつとして糖尿病が挙げられています(表)1)。糖尿病が新型コロナウイルスに感染すると、糖尿病がない患者さんと比較して、重症化や死亡のリスクが2 倍程度まで上昇することが明らかになっています2)。また血糖コントロールが不良の場合、残念ながら死亡率が高いことも報告されています3)。糖尿病以外にも65歳以上の高齢者、慢性腎臓病、高血圧、肥満(BMI 30以上)などの因子を複数持つ方は、より重症化のリスクが高まりますので、日頃の管理が重要になります。感染リスクを減らすために、手指衛生と目鼻口の防護、そして三密を避けソーシャルディスタンスを保つなどの感染防止対策を徹底しましょう。

 

新型コロナ感染症の重症化リスク因子

感染症を予防するには

感染症から身を守るためには、日頃の血糖コントロールを良好に保つことが重要です。また発熱など自分の体調に変化がないか、定期的にセルフチェックをすることが、感染症の早期発見と重症化を防ぐことに繋がります。重症な感染予防のために、有効性が認められているワクチン接種を受けることをお勧めします4)。インフルエンザワクチンは毎年、肺炎球菌ワクチンは5 年に1 回、接種が可能です。新型コロナウイルスなどの新しいワクチンは、信頼できる情報をしっかり収集し、自分の重症化リスクをふまえて、主治医と相談して判断しましょう。

インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病または他の病気を併発している糖尿病は、優先接種の対象となる基礎疾患の一つとされています。

 

感染症にかかった時の注意

感染症の治療は、部位によって異なりますが、重症化する前に適切な治療を早期に行うことが重要になります。症状が軽いからといって決して侮ることなく、早めに医療機関を受診しましょう。

糖尿病患者さんが感染症にかかり、発熱、下痢、嘔吐、食欲不振から食事が摂れない状態となる「シックデイ」では高血糖が多くなります。使用中の糖尿病薬を自己判断で中止すると、さらに血糖コントロールが悪化します。内服薬を主治医の指示通り飲んでも、嘔吐してしまえば薬が体に十分取り込まれないこともあります。インスリン製剤を使っている場合は、食事ができなくても、こまめに血糖値を測定し、インスリン量を調節する必要があります。シックデイの対処を予め主治医に聞いておくこと、実際シックデイでどうしたらよいか迷った場合は主治医に早めに連絡をして相談することが重要です。

 

感染症を心配している方へ

新型コロナウイルス感染症予防のための外出自粛から運動量が減少し、食生活の変化から体重が増加し、血糖コントロールが悪くなることがしばしば認められています。また感染するのが不安で医療機関への受診を控える患者さんも多くいます。しかし糖尿病患者さんは自覚症状が少ないことが特徴であり、検査を受けずに状態が悪化してしまえば元も子もありません。食事の摂り方に注意しながら、室内で体操をするなど積極的な運動を心がけてください。また、感染症の早期発見、早期治療のためにも定期的な受診と検査を行い、血糖コントロールや体調を把握することが大切です。

 

糖尿病と感染症

1)診療の手引き検討委員会:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き第4.1 版 2020
2)Kumar A et al.: Diabetes Metab Syndr. 14(4), 535-545,2020
3)Zhu L et al.: Cell Metab. 31(6), 1068-1077, 2020
4)日本糖尿病学会編・著:糖尿病診療ガイドライン2019

 

 

井倉 和紀(いくら かずき)
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、中神朋子、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

管理番号:JP21DI00060