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GLP-1受容体作動薬

No.3

 

糖尿病の治療に用いる注射薬には、インスリンとGLP-1受容体作動薬があります。
GLP-1受容体作動薬とはどのような薬か、またインスリンとの違いについて解説します。

 

GLP-1受容体作動薬とは

食事をしてブドウ糖やアミノ酸が小腸に到達すると、小腸からインクレチンという消化管ホルモンが分泌されます。GLP-1(glucagon-like peptide-1)は、インクレチンのひとつで、膵臓のβ細胞にあるGLP-1受容体と結合してインスリン分泌を促し、血糖値を下げる働きがあります。ただし、GLP-1は体内のDPP-4 という酵素によって、すみやかに分解されてしまいます。

そこでGLP-1の働きが持続するように工夫して創られた薬がGLP-1受容体作動薬です。1日1回、1日2回、そして1週間に1 回使用するタイプがあります。食事療法や運動療法を含めた治療によって血糖コントロールが不良な2 型糖尿病患者さんで、インスリン分泌が残っている方に使用します。

 

GLP-1受容体作動薬の様々な働き

GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌を促して血糖値を下げる薬ですが、その他にも多様な働きがあります。

●膵臓に対する働き
・膵臓のβ細胞に作用してインスリン分泌を促進して血糖値を下げる。
・膵臓のα細胞に作用してグルカゴン分泌を抑え、血糖値の上昇を抑える。

●消化管に対する働き
・胃の蠕動(ぜんどう)運動を抑えて、胃の内容物が小腸へ排泄されるのを遅らせて、食後血糖値の急激な上昇を抑える。

●中枢神経に対する働き
・視床下部に直接作用して食欲を抑える。
 GLP-1受容体作動薬は、低血糖が少なく、体重増加も起こしにくいことが特徴です。

 

インスリン製剤との違い

GLP-1受容体作動薬とインスリン製剤は、いずれも糖尿病の治療に使用する注射薬ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

インスリン製剤は、インスリンそのものを補います。1型および2 型糖尿病に使用できます。持続時間や効果発現など特徴の違うインスリン製剤が数多く開発され、本来のインスリン分泌にできるだけ近づけた、きめ細かい血糖コントロールが可能です。ただし、低血糖のリスクや体重増加がみられます。

GLP-1 受容体作動薬は、血糖値が上昇した際にインスリン分泌を増やすため、単独で使用する場合には低血糖を起こしにくいことが特徴です。また、食欲を抑えるため体重減少が期待できます。インスリン分泌の残っている2 型糖尿病にのみ使用可能です。

 

GLP-1受容体作動薬への今後の期待

●様々な臓器への効果
GLP-1受容体作動薬には大規模臨床試験において、2型糖尿病患者さんの血糖コントロールを改善するだけでなく、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの発症を抑える効果が認められている薬剤があります1)。また、腎臓を守る効果が認められている薬剤もあり2)、糖尿病合併症のひとつである糖尿病腎症に対するさらなる研究が期待されます。

●様々な製剤の開発
GLP-1受容体作動薬では、飲み薬や皮下埋め込み式製剤などの開発が進んでいます。注射することに抵抗感がある方や、合併症などで注射の手技が難しい方にも、導入することが可能になります。持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用は、インスリンの回数を減らし低血糖や体重増加のリスクを減らすことが期待できるため、両者を配合した製剤の開発がされています。

糖尿病の薬物療法では、さらに新しい薬の開発や治療方法の研究が進められています。ご自分のライフスタイルにあった治療で、よりよい血糖コントロールをめざしましょう。

 

GLP-1受容体作動薬

1)Bethel MA et al.: Lancet Diabetes Endocrinol 6(2): 105-113,2018
2)Mann JFE et al.: N Engl J Med. 377(9);839-848, 2017

 

 

長谷川夕希子
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科

監修
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科
教授・講座主任
馬場園哲也

編集協力
北野滋彦、中神朋子、三浦順之助、柳澤慶香
アイウエオ順

管理番号:JP19DI00051