監修:国立がん研究センター中央病院 総合内科・歯科・がん救急科 科長 大橋 健先生
がんが進行した患者さんの場合は、がんによる痛みが強くなったり、体調がさらに悪くなったりして血糖値がより不安定になりますが、どこまで厳格に糖尿病を治療するかについては個人の希望なども尊重しながら、決められるべきでしょう。当然、糖尿病の合併症の予防を目指す治療とは考え方が異なってきます。
少なくとも、高血糖や低血糖で意識障害を起こすようなことがあってはいけません。それが起きない程度(400mg/dLを超えない程度)に血糖値をコントロールすればよいという考え方もあります。1日何度も血糖測定したり、注射をしたりするのは生活の質(quality of life)を損ねるかもしれません。
しかし、最期まで従来の血糖コントロールを維持しようと努力する患者さんもいます。「がんは進んでしまっても、血糖値は自分でコントロールできる」と考え、糖尿病と向き合われているのです。そうした患者さんは、血糖コントロールという目標を持ち、それを生きる力に変えて日々を過ごしているのかもしれません。
主治医とともに現在の状況とこれからを考え、血糖コントロールに関する希望や負担感を率直に話し合い、最終的には自身で決断するインフォームドチョイス(情報に基づく選択)を行っていくことが大切です。
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