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【インタビュー】糖尿病専門メディアとして、患者さんと医療従事者とともに 三角 英海 氏 (前編)

インスリン発見100周年を記念して、四半世紀にわたり糖尿病のある方と医療スタッフのための情報サイトを運営する株式会社 創新社の代表取締役 三角 英海 氏にインタビューを実施しました。多くの患者さん、医療スタッフに長年、支持される専門メディアを運営する立場から見た糖尿病に関する情報の在り方や移り変わりについて、前後編に分けてお届けします。前編は、糖尿病治療の進化や発展にともなう情報配信の移り変わりと、読者が専門メディアに求める情報についてのお話です。

株式会社 創新社 代表取締役 三角 英海 氏

早稲田大学大学院ナノ理工学専攻を卒業後、株式会社 NTTデータに入社。グローバル物流システムや医薬品流通ネットワークの企画・開発・運用に携わる。2011年より株式会社 創新社に参画し、医療・健康領域におけるWebメディアの企画・運営、医療系学会の運営サポートに従事。2014年に代表取締役に就任。

――インスリンが発見されてから100周年となりますが、メディアという立場から糖尿病の治療における変化をどのように感じられていますか。

糖尿病治療においてインスリン製剤の誕生が画期的であることは言うまでもありませんが、この100年は糖尿病のある方にとって情報面においても飛躍的な変化の期間でした。医師や医療スタッフによる情報提供から始まり、患者会での情報交換、さまざまな啓発冊子や糖尿病関連書籍の出版、健康を題材にしたTV番組の増加、そしてインターネット、SNSと、患者さんの糖尿病に関する情報取得の手段は日々、充実してきていると感じています。これにより、患者さんの治療に対する向き合い方は大きく変化してきたと思います。しかしその一方で、糖尿病治療において、食事と運動が基本であることは昔も今も変わりません。

――変化した部分と変わらない部分を受けて、糖尿病専門メディアとしてはどのように情報を配信してきたのでしょうか?

私たちが配信している「糖尿病ネットワーク」は1996年から始まり、エビデンスをもとにした国内外の糖尿病に関する健康情報を提供してきました。

患者さんのもつ、血糖管理を良くしたい、新しい治療法を知りたいという思いに応えられるよう、食事療法や運動療法に加え、日常的に取り入れることができるライフスタイルに関する情報まで幅広くお伝えしています。疾患情報ですので、決してポジティブなニュースばかりではありませんが、患者さんが前向きに治療に向き合える情報提供を心掛けて、取り組んでおります。

――「糖尿病ネットワーク」では、どのような情報を見ることができますか?また、どのような人が活用しているのでしょうか?

このサイトは、25年間かけて患者さんと医療従事者、関係者の方々とともにその時代に適した情報発信に取り組み、築き上げてきたものです。そこには、患者さんでも医学の進歩にふれられる「ニュース」に加え、手軽に楽しく知識を身に付けることのできる「糖尿病3分間ラーニング」や医師が監修する「連載・コラム」、一般の人も参加できる糖尿病に関するイベントや学会情報、近くの糖尿病診療に熱心な医療機関が見つかる「糖尿病のある方の病院検索」まで、幅広いコンテンツがあります。

その中でも、いつも読者の間で盛り上がっているのが「糖尿病Q&A談話室」。ここでは、糖尿病のある方やその関係者などが自ら投稿し、不安や疑問を共有したり解決したりすることができます。患者さん自身が、実際に経験したトラブルやそれに対する周囲の方からのサポートを共有するほか、ご家族のために相談する方など、投稿する人の想いはさまざまです。こうした患者さんやご家族の想いが活発に寄せられるのは、当サイトが糖尿病専門メディアとして長い歴史をもち、安心してご活用いただけているからこそだと自負しています。

――患者さんが不安に思ったことを、病院や薬局で相談するほかにも選択肢が増えてきたということですね。

そうですね。従来の患者会などに加え、インターネットでの患者さん同士の交流は増えてきているように感じます。「糖尿病ネットワーク」に限らず、他のSNSを含め思うところですが、病気に向き合い、さまざまな経験を持つ患者さん自身が情報発信者となり、自身の経験を新しく病気になった人や同じ病気で悩んでいる人に役立ててもらうことは、発信した患者さんご自身の治療への気づきやモチベーションにもつながっているように思います。ただし、健康に関わる情報ですので安心、安全な情報交換に向けての取り組みも必要です。

――糖尿病のある方を支える医療従事者にとっても、新しい学びと気付きの場になりそうですね。

はい。まさに、医療従事者にとっては患者さんのリアルな気持ちを知るきっかけの一つとして参考になるものと思います。今までは医療機関の中で、患者さんと直接お話しすることでしか得られなかった情報に加え、インターネットを通じて、より多くの患者さんの不安や悩みにふれることができます。

最新の研究や論文情報だけでなく、いま患者さんはどういったことに悩んでいるのか、情報源の一つとして少しでもお役に立てれば幸いです。

一方で、患者さんの情報源が増えたことや治療の選択肢が増えたことで、医療従事者に求められる対応もハードルが高くなっていることを感じております。

糖尿病ネットワークのアクセスの3割は医療従事者です。ご自身が受け持つ患者さんの血糖管理を少しでも良くしたいと熱心に取り組む医療従事者の方々が、情報を探しに日々、アクセスしてくださっています。私たちが提供する治療や治療支援に関する情報は、医学的な知識のバックグラウンドを持つ医療従事者によるテーラーメイド (個別化医療) な情報提供により、更に患者さんの理解が深められ、患者さん一人ひとりのアドヒアランス向上に寄与できるものになると考えています。「糖尿病リソースガイド」と合わせて、忙しい診療や治療支援の合間に情報提供の面で少しでも貢献できればと考えています。

――糖尿病のある方や医療従事者から、どのような情報が求められているのでしょうか?また、昔と今で求められる情報に変化はありますか?

近年では、インターネットやSNSで情報を集める人が増え、患者さんや一般の方もより詳しい情報にふれられるようになりました。しかし、インターネットでの情報は、根拠が不明なものや何かしらのバイアスがかかったものが多くあります。情報過多な時代ではありますが、そういったものと一線を画し、誠実で中立的な情報提供をどう実現するかが求められているように思います。

また、患者さんが求める情報は、基本的な疾患の知識から、より自分に近い病状の方の情報や、ちょっとしたライフスタイルに関する情報まで広がってきています。そういった情報の橋渡しを「糖尿病ネットワーク」や「糖尿病リソースガイド」を通じて実現できればと考えています。


<後編に続く>


・糖尿病ネットワーク

1996年に開設された主に糖尿病のある方や医療スタッフ向け糖尿病専門情報サイト。

糖尿病をはじめて学ぶ方向けの初歩的な情報から、すでにある程度知識のある方向けのより細かな情報まで幅広く役立つ情報が紹介されています。

糖尿病に関する最新のニュース、動画で楽しく学ぶことの出来る3分ラーニング、日常生活へすぐに取り入れられる運動や食事療法に関する情報、患者さんによる漫画連載など長年のサイト運営により非常に豊富なコンテンツが揃っています。

Twitter:https://twitter.com/dmnet_jp

Facebook:https://www.facebook.com/DiabetesNetwork.JP/

 

・糖尿病リソースガイド

2009年に開設された医療従事者向けの糖尿病專門情報サイト。

糖尿病医療の現場で求められる医薬品や医療機器をはじめ、食事や運動など糖尿病医療に役立つ製品、サービス、関連情報が紹介されています。

5月にはリニューアルされ、糖尿病に関わる医療従事者の方へより充実した情報コンテンツを提供するため、医歯薬出版株式会社の協力のもと、糖尿病の臨床総合誌『糖尿病プラクティス』の主な記事がオンラインで読める有料会員サービスも開始しました。

Twitter:https://twitter.com/DMRG_jp


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