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連載ブログ第5回 糖尿病に対する不安

ジャスティン・モリス

今月も私のブログを読んでいただきありがとうございます。今年は年初から6カ月間、世界各国を飛び回っていましたが、ホームタウンであるホバート(オーストラリアのタスマニア州の州都)に妻とともに戻ることができ、嬉しく思います。そして、地元で自転車の修理をしたり、私が代表を務める自転車競技のコーチングを行う会社で、若手選手の目標達成の手助けをする「本業」を再開します。

1カ月ほど同じ場所で落ち着いて過ごすことは素晴らしいことで、最近の旅で私が学んだことや経験したことについてじっくり考えるいい機会になります。

今月のブログでは、糖尿病の人たちにとって、とても重要だけれども、あまり触れられることのないテーマを取り上げたいと思います。

私はどの国でも、糖尿病とともに生きる人たちと会うときには、その人たちが抱えている最大の問題は何かを正しく理解したいと考えています。糖尿病の人たちに会うために世界中を旅して8年が経ちました。この8年間の旅を通じて、世界共通の、技術が進歩しても決して払拭できない問題があることがわかりました。むしろその問題は、糖尿病について管理する技術が進化し、多様化するほど大きくなります。

その問題とは、「糖尿病に対する不安」です。

1型糖尿病の私の1日は、血糖測定で始まります。これは世界中にいる何百万もの1型糖尿病の人たちも同じだと思います。この検査で、血液中に含まれている糖分の量を示す血糖値がわかります。この数値は、ともすれば私の1日を支配してしまいます。

実際、先日の血糖値は理想からは程遠い結果でした。血糖値が低い状態(低血糖)になると、食べ物を取りに寝室から台所に移動するだけのことが、途方に暮れるような道のりに感じられます。このような経験を22年以上してきた今、私は1型糖尿病とともに生きる上で避けられない障壁に対して、精神的にも肉体的にも、うまく対処できる技を身に着けてきました。

朝、低血糖になった場合は、無理をしてでもなるべく早く朝食を摂ります。そして私の1日の日課を淡々とこなすことで、低血糖によって起こるネガティブな気分を一日中引きずらないようにしています。

低血糖になった朝は、目覚めてから2、3時間はすごくだるいと思いますが、その日やるべきことができないほどではありません。

 

糖尿病とともに生きる人生を満喫するためには、私たちは、”今”を大切にしなければいけません。

 

そのためには、高血糖や低血糖が起こったら、ただちにその場で対処することが大切です。対処が早ければ早いほど、速やかに日常を取り戻すことができます。低血糖は1日を台無しにしてしまう可能性もありますが、向き合い方次第で影響を最小限に留めることができるのです。

また、血糖値が低かった場合には、「いったい何が起こっているのだ」、「これらの値は危険ではないか」と、いう思いに駆られます。私も、長年このような不安を経験し、この血糖値の数字が意味することを考え、恐怖を感じます。

このような心配は糖尿病に対する不安の根源であり、私はこのような不安に左右されて、人生の目的や夢の達成に制限をかけてしまう人々をこれまで見てきました。夢や目標も失ってしまう程のこの不安こそが、1型糖尿病の悲劇の1つであると私は考えています。

そして、このような不安は身体的な徴候や症状がほとんどないため、軽視されたり見過ごされたりすることが多いのです。

私がこれまでに出会った糖尿病の人たちの中には、いつも血糖値を気にして、血糖値に囚われているように見える人もいました。また、持続的に血糖値を測定できることによって、ジェットコースターのように変動する血糖値を常に連想させ、糖尿病に対する不安を増幅させてしまう場合もあります。

 

血糖値は完璧にはならないことを受け入れて、不安があっても前に向かっていくことが、糖尿病に対する不安から自由になるために最も重要な要素の一つだと考えています。

 

大学生の頃、私は建設現場で働きました。建設現場では予定外の問題がたびたび発生し、建設業者は絶えず、そのような問題に対処しています。私はこの仕事を通して、糖尿病とともにうまく生きるためにも役立つ態度や姿勢があることを学びました。建設業者は、建設現場で「なるようにしか、ならないのさ」とよく言います。建設現場で遭遇する問題は必ず現場で起こるので、彼らはその場から離れず、「なるようにしか、ならないのさ」と言いながら、自分の手でその起こった問題をどんどん進め、乗り越えていくのです。糖尿病とともに生きることも、これとあまり違いはありません。

 

「なるようにしか、ならないのさ」という言葉のとおり、困難から逃げずに、きちんと向き合って、取り組んでいくことが大切なのです。

 

2017年に英国で、ノボ ノルディスク社が主催する「Pedal for 7」という素晴らしいイベントが開催されました。その際に、とても光栄なことに、バーミンガム出身のモーリーンという92歳の女性にメダルを授与させていただく機会がありました。

彼女は1型糖尿病とともに80年間生きており、英国糖尿病協会から表彰されることになったのです。私はモーリーンに、「これだけ長く、1型糖尿病とともに生きてきて、あなたが学ばれたことの中で最も大切だと思われることは何ですか」と尋ねました。

すると彼女は、

 

「あなたも、既に実践されていると思いますが、自分に与えられた課題を一つひとつこなしていくことです」

 

と、非常に丁寧なイギリス英語で話してくれました。

モーリーンはその日、イベントに参加していたすべての人に、前に進む勇気を与えてくれました。彼女は、糖尿病に好き勝手にさせないことが重要であることを強調しました。

 

糖尿病は私たちの膵臓の機能を既に奪ってしまいましたが、私たちの幸せや平静さ、やる気、目的まで病に奪われてしまう必要はありません。

 

確かに糖尿病にはそれらを奪っていく力はあるかもしれませんが、私たちが流されなければ何一つ奪うことはできないのです。私たちがどのように糖尿病と向き合い闘っていくかによって、糖尿病にどれだけ奪われてしまうかが決まります。

 

私たち一人ひとりの“ヒト”としての要素を糖尿病に与えるのではなく、他の人と一緒に分かちあっていくほうがずっと健康的に暮らせるのです。私たちは、自分で経験したものや見たものによってどんどん強くなれます。

 

私は、1型糖尿病とともに他人を鼓舞し勇気づけられる人たちと過ごした、これまでの人生をとても幸運に思います。そして、これからの人生、これまでに出会った人々の物語をたくさんの人たちにもっともっと広めていきたいと思います。

最後に、糖尿病に対する不安は生活に大きな悪影響を及ぼす可能性はありますが、それを改善することはとても簡単だと思います。

忍耐力こそ必要とされますが、大学で心理学を学んだ際に、悩んでいる人を最も励ます言葉の1つは、

 

「全てうまくいくから、大丈夫」

 

という言葉だと教えてもらいました。

糖尿病を管理する場合も、同じだと私は確信しています。

 

 

ジャスティン モリス

英語版はこちら

 

ジャスティン・モリス氏 略歴:

10歳で1型糖尿病と診断されたジャスティンさんは、人生の夢と目標を見失いかけていましたが、糖尿病対策を目的に自転車競技を始め、プロのサイクリストの道へ進むきっかけにもなりました。ロードレースのプロサイクリストとして5年間を過ごし、競技と糖尿病のコントロールを両立させながら世界の5大陸を転戦しました。その間の競技生活から多くのことを学び、競技の中でも外でも困難に対処していく経験と知恵が身に付いたと語っています。

その後、プロ選手を引退してオーストラリアのマッコーリー大学を2015年に卒業し、心理学と教育学の学位を取得しました。大学在学中には、学業だけでなくスポーツ競技でも優れた成績を収めた学生に贈られる「ブルース・アワード」を授与されました。現在もチームSubaru-marathonMTB.comに所属してマウンテンバイクのマルチデー自転車レースに出場しており、変わらぬ健脚ぶりを発揮しています。クロコダイル・トロフィー、シンプソン・デザート・バイク・チャレンジ、パイオニア・イン・ニュージーランド、モンゴル・バイク・チャレンジの各レースで表彰台入賞を果たしています。

2011年からは、自転車競技経験をもとにした情報発信を開始しました。希望と力を与え、逆境を克服するメッセージを世界中の人々に発信し続けています。

連絡先:
Twitter: @JustinMorrisTT1
Instagram: @justinmorrismdog
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/justin-morris-3a71b4a7/www.mindmatterscoach.com


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