

睡眠は量(時間)だけではなく、質も重要です。睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠から構成され、約90分のサイクルでくり返されています。通常25%がレム睡眠、その他が深い眠りのノンレム睡眠です。睡眠時間を変えずに、深い眠りを妨げると、睡眠の質が低下し、糖代謝も低下させたという報告があります。睡眠の質も、糖尿病の予防や治療に、重要な役割を持っています。
「睡眠不足」や「寝た気がしない」などの睡眠障害は、ホルモンの分泌に影響を与えたり、体内時計を狂わせたりしながら、耐糖能異常を起こし、肥満の原因となることがわかりました。そして、いずれ高血糖となり、糖尿病を発症する可能性もあります。また、糖尿病の方では、治療や将来に対する不安などが不眠の原因になることも少なくありません。このように、睡眠障害は、糖尿病をはじめとする生活習慣病の原因を作り、その結果として不眠を招くという悪循環をもたらすことになります(図4)。
糖尿病のみならず、生活習慣病の予防や治療に重要なのは、まず食事療法と運動療法です。しかし、それだけでなく、睡眠の量や質も、糖尿病の発症や肥満に関与していることがわかりました。
24時間社会となった現代では、適切な時刻に適切な量の睡眠をとることが困難なことも多くなりました。不眠は高齢者だけの問題ではありません。生活が深夜化してしまった子どもや働き盛りの人々でも数多く見受けられます。睡眠の量と質の低下が、将来の生活習慣病の引き金になる可能性が高いのです。
よい睡眠の量と質を確保するために、夕食後から寝るまでの時間を見直してみてはいかがでしょうか。なかなか寝つけない方は、寝る前に、自分なりのリラックスタイムを作るのもよいでしょう。長い時間続けて寝られない方や、早く目が覚めてしまう方などは、体内時計を意識してみましょう。そのためには日常活動のめりはりが必要です。日中に光を浴び、活動量を増やしましょう。また朝食を摂ることを含めた規則正しい食生活も大切です。それでも改善されない場合には、主治医と相談して、睡眠のための薬の服用を考えても良いかもしれません。睡眠の質と量の改善が、糖尿病の予防や治療につながることを、もっと深く認識していただければと思います。

佐藤 麻子(さとう あさこ)
東京女子医科大学糖尿病センター
中央検査部臨床検査科/糖尿病センター准教授
1983年東京女子医科大学卒業、同年東京女子医科大学糖尿病センター入局。1995〜1998 年デンマーク Steno Diabetes Center へ留学。
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