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1/2No.31 糖尿病と睡眠障害(2011年10月発行)

近年、血糖と睡眠時間には関連性があることがわかってきました。糖尿病が不眠をもたらし、また睡眠不足が糖尿病の発症リスクを増すという悪循環が存在します。糖尿病と睡眠時間の関連性について、また心がけたい生活リズムについて、東京女子医科大学糖尿病センター佐藤麻子先生にお話を伺います。

不眠の訴え

 「なかなか寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」「朝早く目が覚めてしまう」「よく眠れない」など、眠りに不満を持った経験は、誰にでもあることでしょう。調査によると、一般的に日本人の5人に1人が、何らかの不眠を訴え、特に高齢になると、その割合は増えてきます。また、糖尿病を患っている方が、不眠を訴える割合は約30〜40%と、糖尿病を患っていない方より多いことがわかっています。

糖尿病の患者さんの不眠の特徴

 糖尿病の患者さんの場合、入眠障害と早朝覚醒が多く認められます。また、夜中に目が覚めると再び眠れないという「中途覚醒」を訴える方も少なくありません。現代生活では、夕食が遅く、量も多く、寝るまでの時間が短いため、夜間の血糖値は高くなりがちです。そのため、のどが渇いて夜中に起きる、度々トイレに行くことがあります。神経障害のある方では、足の痛みやこむらがえりが起こる、夜間になると足がむず痒くなる「むずむず脚症候群」で眠れない方もいます。その他、以前に夜間の低血糖を経験した方では、不安が強く、不眠になる方もいます。さらに睡眠の質についても問題が起こることがあります。太っている方は、いびきを伴う無呼吸症候群が多くみられますが、これは熟睡できない原因になります。

睡眠時間と糖尿病の関係

 日本における一般の人を対象とした研究によると、6時間未満の短い睡眠、または9時間以上の長い睡眠をとっている方では、HbA1c値か高いことが報告されています(図1)。
 また、海外の報告では糖尿病の発症に、睡眠時間が関係していることがわかりました。平均睡眠時間が7時間の方の、糖尿病発症リスクを1とすると、5時間以下で約2倍、逆に8時間より長いと約3倍、糖尿病になりやすいと言われています(図2)。つまり、睡眠時間が7時間より短くても長くても、糖尿病の発症リスクが高くなります。では、なぜ、睡眠時間が糖尿病に影響するのでしょうか。

図1 各睡眠時間と HbA1c 高値者の割合

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各睡眠時間とHbA1c高値者の割合

図2 睡眠時間と 2 型糖尿病発症の危険度

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睡眠時間と2型糖尿病発症の危険度

1) 糖の代謝が変わる
 健康な方が睡眠不足の状態を続けると朝食後の血糖が上昇しました。また、同じ方に十分な睡眠を取らせると食後の血糖上昇は回復しました。つまり睡眠不足により耐糖能が悪化することがわかっています。これは、細胞での糖の取り込みと肝臓での糖放出抑制の低下や初期インスリン分泌反応の低下が影響していると考えられています。

2) ホルモン分泌が変わる
 睡眠不足が続くと成長ホルモンやコルチゾール、ノルアドレナリンなどのホルモンの分泌が増加します。これらのホルモンは血糖および心拍数と血圧を上けげ、消化管の働きを抑えて体を活動モードにする交感神経に働きます。そのため、耐糖能が悪化すると考えられています。

3) 食欲が増進する
 睡眠不足は、食欲を制御するレプチンというホルモンの分泌を減少させます。さらに、食欲を増すグレリンというホルモンの分泌を増加させます。つまり、睡眠不足は空腹感を強め、食欲を増進します。それも炭水化物が食ベたくなる傾向があるため、肥満になりやすく、糖尿病につながる危険性が高くなります(図3)。

図3 睡眠時間が短くなった時の変化

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睡眠時間が短くなった時の変化

体内時計が乱れる

4)体内時計が乱れる
 人間の体内には24時間周期の「体内時計」があり、時刻によって変化する太陽光や温度などの環境に適応するため、「概日(がいじつ)リズム(サーカディアン・リズム)」を備えています。
 朝目覚めて夜眠くなる睡眠と覚醒のサイクルや、食欲、血圧、体温調節、ホルモン分泌などの周期パターンは、この体内時計によりコントロールされています。最近では、子供から大人まで、夜型の生活が増え、時間に関係なく行動したり、食事をしたりしています。こうして知らず知らずのうちに、体内時計に狂いが生じ、十分な睡眠が取れなくなり、糖や脂質の代謝が乱れ、過食、肥満、高血圧、メタボリックシンドロームなとどが、引き起こされることが明らかになってきています。

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