糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
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糖尿病人口が増え続ける中、糖尿病診療も日進月歩で発展しています。最新の糖尿病治療薬や合併症対策などについて、東京女子医科大学 糖尿病センター内科 教授・講座主任の馬場園哲也先生にご解説頂きます。

 

平成28 年国民健康・栄養調査によりますと、糖尿病患者さん* と糖尿病予備群** の人は、それぞれ約1,000万人と推計されています(図)。糖尿病患者さんは男女共に60歳を超えると急激に増加し、3 ~ 4 人に1 人は糖尿病と言われています。患者さんの高齢化も今後はさらに進むと考えられています。
一方、糖尿病患者さんのうち、病院やクリニックで治療を受けている患者さんの割合は、平成9 年には45.0%でしたが、平成28年では76.6%となり、年々、増加傾向にあります。このことは、この20年間における糖尿病治療の啓発の成果と、積極的に治療をする意識が高まっている結果と考えられます。
* 糖尿病患者: HbA1c 値が6.5%以上または糖尿病治療を受けている人
** 糖尿病予備群: HbA1c 値が6.0%以上6.5%未満で糖尿病が強く疑われる人以外

 

 
糖尿病および糖尿病予備軍の推計人数の年次推移

糖尿病に関する様々な研究が進み、新たな見解が見出され、診療ガイドラインの制定や改訂が行われています。糖尿病と一口に言っても、その発症時期は小児期から高齢者まで様々です。また1型の方も2型の方もいらっしゃいます。小児・思春期の糖尿病、妊娠中に発見される糖尿病、高齢者の糖尿病、合併症のある糖尿病など、年齢や生活スタイルなどを考慮した診療ガイドラインなどが日本糖尿病学会だけでなく、広く他の学会と協力しながら制定されています。

 

 

例えば、糖尿病合併症のひとつである糖尿病腎症は、進行すると末期腎不全となり、透析療法が必要になることがあります。2014年には日本糖尿病学会、日本腎臓学会、日本透析医学会などが協力し、糖尿病腎症の病期分類を改定しました。その結果、患者さんそれぞれの腎症の状態をより明確に把握できるようなり、さらに血糖コントロールだけでなく、腎臓の状態、血圧や食事中のたんぱく質の量などを早い段階から管理することが可能になりました。こうした診断の進歩が、糖尿病腎症の進行を遅らせ、透析になる方を減らす一助になっていると考えられます。
また、高齢の糖尿病患者さんでは、高血圧などの他の病気のある方も少なくありません。高齢者では病状だけでなく、認知機能の他、独居などの生活状況や経済状態などを考慮した治療が必要です。日本糖尿病学会と日本老年医学会は合同で、2017年に「高齢者糖尿病の診療ガイドライン」を策定し、高齢者に適した診療と治療を行うことを勧めています。

 

 

近年、GLP-1 受容体作動薬、DPP-4 阻害薬、さらにはSGLT2 阻害薬といった新たな糖尿病治療薬が登場しました。経口薬では、既存の2 種類の作用が異なる薬剤をひとつにした配合薬が使用可能となっています。配合薬は飲む薬の数や回数を減らすことができます。注射薬では、作用時間の長い製剤が登場してきました。これらの新しい製剤は個々の患者さんのライフスタイルに合わせやすいだけでなく、飲み忘れの防止や、介助者の負担を低減することにもつながります。

 

 

糖尿病患者さんは高血糖に加えて肥満や高血圧、脂質異常症を伴うことが多く、これらはいずれも動脈硬化のリスクになり、心臓病や脳卒中発症の引き金になることがあります。

近年の研究で、GLP-1受容体作動薬やSGLT2 阻害薬には、血糖値を下げる作用以外に、心臓病や脳卒中の発症リスクを下げることや、腎症の進行を抑える可能性があることが分かってきました。これらの糖尿病薬がどのようにして糖尿病の合併症を予防できるかは、まだ明らかになっていない点も少なくありません。今後の更なる研究結果が待たれます。

糖尿病治療では、食事療法と運動療法が基本ですが、新しい診断方法の進歩や薬剤の開発は、糖尿病の治療や合併症の進行予防に役立ち、糖尿病患者さんにとって朗報です。幼児から高齢者まで、幅広い年齢の患者さんそれぞれのよりよい生活を支えるために、様々な側面から研究や開発が続いています。特に今後の長寿高齢化社会では、合併症を遠ざけることで健康寿命を延ばすことがとても大切です。患者さんそれぞれの病状に応じて、飲み薬や注射の薬の力も借りることも必要です。

糖尿病治療に前向きに取り組むことで、刻々と進歩する糖尿病治療の恩恵を受けることが可能になります。良好な血糖コントロールを実現し、合併症をも遠ざけ、患者さんそれぞれの望む充実した人生につながることを期待したいと思います。

 

馬場園哲也(ばばぞのてつや)
東京女子医科大学 糖尿病センター 内科 教授・講座主任

 

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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