糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
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災害が起こると、血糖コントロールどころではありません。そうであっても落ち着いたところで少しでも血糖値を良くしておきたいものです。災害への備え、避難所で気を付けることなどについて、東京女子医科大学東医療センター内潟 安子先生にご解説頂きます。

日本はこの90年弱の間に度重なる大震災に見舞われました。1923年の関東大震災をはじめとして、最大震度6 を超える近年の主な大地震は、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などがありました。この他にも大小の地震が、日本全国で毎日のように発生しています。

災害は地震だけでありません。一般に災害には、自然災害(豪雨、暴風、地震、津波、高潮など)、テロ災害、武力攻撃災害、NBC※災害、原子力災害(原子力発電所類似施設への攻撃)があります。

※NBC とは、核(Nuclear)、生物(Biological)、化学物質(Chemical)の略で、原発事故のような核による災害、炭疽菌事件のような生物による災害、サリン事件のような化学物質による災害の総称です。

 

2001年9 月11 日、米国同時多発テロ事件が起こりました。その翌日にグアムから帰国予定の1型糖尿病患者さんがいました。

グアムからの飛行機は欠航となり、彼は1週間、足止めされました。幸いにも余分のインスリン製剤を持参していたため、無事に帰国することができたそうです。

これまでの災害によって、実際に起こったこととしては、停電をはじめとしたライフラインの停止、ガソリン不足、交通網の寸断、情報の断絶などです。

物資を手に入れられる場所、診察ができる病院、不足している物は何か、困っている患者さんはどこにいるのかなど、このような事態の対処法など、スマートフォンや携帯電話を持っていても、支援者側と被災者側の間でうまく情報が伝わらないのです。よって、非常時には他人をあてにできないため、すべて自分で判断し、実行しなければならないということを前提とした備えが必要になるのです。

 

被災時に実際に自分で何を行うことができたかという、東日本大震災後のアンケート調査があります(図1)。「治療を中断しないようにすること」は60%、「水分をしっかりとること」は50%の方が実行できました。一方、「食事量の目安を覚えておく」、「お薬手帳や説明書を常に携帯する」、「運動の必要性や避難所でできる軽い運動の方法」、「食べられない時の対処方法」、「必要なものを避難袋に備えておく」、「相談できる連絡先」、「エコノミークラス症候群の症状や予防方法」などの実施率は40%以下でした。さらに震災前に、地元の医師会や薬剤師会と行政が中心となって、薬剤供給対策を行っていた医療機関は50%であったことも報告されています。

 

図1 指導されていたことと被災時の実施状況

●超急性期(災害発生直後約2 日間)
1型でも2型でも、水分は十分にとって下さい。

[1 型糖尿病の場合]
食事をしていなくても、極度の緊張状態のため血糖値が上昇しています。被災時には、たとえ消毒ができなくても、インスリンを注入して下さい。注射針が足りなければ同じ針を使いましょう。基礎インスリンは通常の単位数を使用します。食事をしていなかったり、通常より食事量が少ない場合には、追加インスリンは通常の半量程度にしましょう。食事は、米、パン、めんなど食品交換表の表1のものが多くなりがちですが、何でも食べましょう。高血糖になりやすいので、インスリンを追加してもかまいません。

緊急時ですので、もし手持ちのインスリンがなくなった場合は、病院や薬局まで行くことができれば、お薬手帳や手持ちのインスリン製剤を見せて、同じインスリン製剤を入手できる場合があります。同じインスリン製剤がない場合には、超速効型の代わりに速効型、持効型溶解製剤の代わりに中間型を使うことも可能です。その場合、1日量の4分の1の単位数を1回量として使用します。

[2型糖尿病の場合(基礎インスリン、追加インスリン)]
基礎インスリンは通常の半量程度に、追加インスリンは食前に4 ~ 6単位程度にしましょう。

●超急性期後の留意点
超急性期を過ぎれば救護所や救護班が立ち上がります。インスリンや糖尿病治療について、相談も可能になります。避難所での食事は、高カロリーの物が多いので、体重が増えないように留意しましょう。また、エコノミークラス症候群にならないように、水分をしっかりとって、散歩などで体をこまめに動かすようにして下さい。

[摂取カロリーの目安]
おにぎり2個と牛乳200mL、またはあんぱん1個とバナナ1本と牛乳200mLで約500キロカロリーです。お菓子やジュースは高血糖になりやすく、インスタントラーメンは塩分が多いのでスープは飲まないようにしましょう。

 

昨今、地域の行政による災害対策が強化されてきていると思いますが、平時から自分で自分の身を守る準備をしておきましょう。インスリン製剤や飲み薬などは、多くの種類がありますので、避難所で同じものがすぐ入手できるとは限りません。そのため、常にいつも使っている薬を、少なくとも2週間分はストックして準備しておきましょう。また、ペットボトルの水も常備しておきましょう。

日本糖尿病協会ではインスリンを数ヵ所に分けて保管することを勧めています。同協会のホームページに防災意識啓発ミニチラシ(図2)がありますので、印刷して常に携帯しておくのも良いでしょう。

 

図2 防災意識啓発ミニチラシ

また、ホームページには災害時に糖尿病患者さんに気を付けて頂きたいことがまとめてあります。「災害時ハンドブック」(図3)などを参考に、いつ起こるかわからない災害時のための常 日頃から準備をしましょう。

 

図3 災害時ハンドブック

内潟 安子(うちがた やすこ)
東京女子医科大学東医療センター 病院長

 

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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