糖尿病について徹底解説。血糖値・HbA1cから
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少子高齢化が言われる中、高齢の糖尿病患者さんが多くなっています。高齢の糖尿病患者さんの特徴や血糖コントロールの目標値、日常生活での注意点について、東京女子医科大学糖尿病センター 馬場園哲也先生にご解説頂きます。

厚生労働省の平成26 年国民健康・栄養調査結果によると、糖尿病が強く疑われる方の割合*は、前期高齢者(65 ~ 74 歳)で18.3%、後期高齢者(75 歳以上)では19.7%と報告されています(図)。65 歳以上の方では、糖尿病が疑われる方が5 人に1 人と推定されます。
高齢になると糖尿病になりやすい理由は、加齢に伴うインスリンの分泌の低下、日常の活動量の減少に伴う筋肉量の減少、そして肥満の増加などにより、インスリン抵抗性が増大すると考えられています。

*:国民健康・栄養調査において、「糖尿病が強く疑われる方」とは、ヘモグロビン A1c の測定値があり、「インスリン注射または血糖を下げる薬の使用の有無」および「糖尿病治療の有無」に回答したもののうち、ヘモグロビン A1c(NGSP)値が 6.5%以上、または、「糖尿病治療の有無」に「有」と回答したもの。

 

図 糖尿病が強く疑われる人の割合(20歳以上、年齢階級別)

・個人差が大きい
年齢を重ねると、肉体的、精神的、社会的な個人差が大きくなります。たとえば、同じ年齢の糖尿病患者さんでも、糖尿病を発症した年齢も異なりますし、合併症の発症や進行などの状態も様々です。また、健康状態や糖尿病に対する理解度も異なります。家族との同居や独居、サポート体制なども一人ひとり違います。そして、患者さん自身が一人でできること、たとえば、買い物や外出、入浴や食事の準備などにも差があります。

・高血糖や低血糖を起こしやすい
一般的に年齢を重ねると腎臓や肝臓の働きが低下してきます。血糖降下薬による重症の低血糖は、高齢であるだけでなく、高齢になると腎不全が併発しやすいため食事量の低下が大きく影響して起こってきます。発熱、下痢、嘔吐、食欲不振、高熱などのシックデイでは、重症の低血糖だけでなく、高血糖を発症してきます。
また、低血糖の自覚症状に気が付かないこともあります。動悸、ふるえ、冷汗など典型的な低血糖症状だけでなく、ふらふらする、落ち着かない、力が入らないなどの症状があれば、低血糖かもしれません。日常生活では、空腹時に入浴を避けるようにしましょう。低血糖になりやすいためです。

・糖尿病以外の病気がある
 年齢が高くなるにつれて、糖尿病以外の病気を持つことが多くなります。また、糖尿病歴の長い方では、糖尿病合併症をすでに発症していることもあります。他にも高血圧、脂質異常症、骨粗しょう症、腰やひざなどの関節痛も起こりやすく、糖尿病に影響を与えることが多く、併せて治療していく必要があります。

 

日本糖尿病学会と日本老年医学会では、高齢の糖尿病患者さんのために、新たな血糖コントロール目標を作成しました。これは、年齢や健康状態、治療内容などを考慮して、それぞれの患者さんに合わせて、安全で効果的に糖尿病の治療を行えるよう工夫されています。
年齢に関わらず、合併症予防のための目標はHbA1c 7.0%未満とされています。しかし、高齢の患者さんでは、それぞれの健康状態、年齢、認知機能、身体機能、他の病気の有無、重症低血糖のリスクなどを考慮して、個別に設定されます。患者さんそれぞれの生活や病状を十分に考慮した治療を行うために、目標値を今までより柔軟に設定することになりました。たとえば、重症の低血糖が心配される患者さんでは、血糖コントロールの目標の下限値を決め、より安全な治療を行うことを勧めています。ご自分の目標値については、主治医に確認して下さい。

 

主治医は患者さんやご家族と一緒に、患者さんの年齢や糖尿病の状態だけでなく、住環境、サポート体制、併せ持っている病気など、様々な要因を考慮して、患者さん個々に合わせた方法を考えていきます。必要に応じて、薬の量や飲む回数、インスリンを注射する回数を少なくしたり、使い勝手のよい注入器の提案などもしていきます。
少しの工夫や変化で、不具合や不安が解消されることもたくさんあります。以前に比べて、不具合が出てきたり、心配なことがあれば、遠慮なく主治医に相談してみましょう。
また、年齢に関係なく、食事療法と運動療法は糖尿病治療の基本です。食事は生活の中でのひとつの楽しみでもあり、厳し過ぎる食事制限は、生活の質の低下につながる可能性もあります。食事療法について、何か気になる点があれば、家族や主治医、栄養士と相談して、患者さんに合った方法を探っていきましょう。
春や秋の期間が縮まり、暑い日が続くようになりました。1 年を通して熱中症や脱水症に注意していきましょう。汗をかいた意識がなくても、空気が乾燥していると、体内の水分が失われやすくなります。また、夏は意識して水分を摂りますが、汗をかきにくい冬はその意識が低下し、十分な水分を摂れていないこともあります。糖尿病でなくても、高齢の方では脱水になりやすいので、水分の補給に注意するようにして下さい。
運動療法は、心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、認知症の発症を予防することがわかっています。また、いつまでも若々しく、自立した生活を維持するためにも運動は重要です。腰やひざなどの関節や他の病気への影響もふまえて、主治医と相談しながら、運動を続けるようにしましょう。
生活環境などが変化した時には、遠慮なく主治医に相談しましょう。年齢を重ねて生活に変化が現れても、上手に血糖コントロールを続け、元気で快活な日々が送れるようにしましょう。

 

馬場園 哲也(ばばぞの てつや)
東京女子医科大学糖尿病センター

 

監修 内潟 安子 [ 創刊によせて ]
東京女子医科大学
東医療センター 病院長

編集協力
岩﨑 直子、尾形 真規子、北野 滋彦、中神 朋子、馬場園 哲也、廣瀬 晶、福嶋 はるみ、三浦 順之助、柳澤 慶香
(東京女子医科大学糖尿病センター)
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